<民主>と<愛国>

「<民主>と<愛国>」についてのメモ。<民主>と<愛国>とは…
HOME > <民主>と<愛国>

小熊英二

丸山真男、竹内好、吉本隆明、江藤淳、鶴見俊輔らの戦後思想の特質を、彼らに刻印された「世代的、個人的な戦争体験の思想化」として鮮やかに解き明かした。その特質が最大の弱点となって、戦争を体験していない世代と共有できる言葉を創造できなかった結果、戦後思想の風化を招くとともに、戦後日本が「平和主義や民主主義にもとづいたナショナル・アイデンティティー」を形成できなかったことを指摘。

 戦後、日本では政治的関心を『ナショナリズム』の言葉で表現する回路をうまく作れなかった。六〇年安保闘争など、できそうな局面は幾度もあったけれども、冷戦構造と対米従属関係の中で、成立しなかった。冷戦と経済成長の終焉とともに思想状況は流動化したが、政治的関心を語る新たな回路は見つかっていない。

 人々の政治への関心を時代ごとに表現してきた言葉。その歴史的意味を明らかにし、現代において新たな言葉が生まれる可能性を探る。

 『<民主>と…』でも、数々の戦後思想が、人々に受け入れられ、忘れ去られていった過程は、「民主」「愛国」の二語に託された意味の変容の歴史として与えられている。混乱と改革の時代だった一九五四年までの「第一の戦後」では、「民主化によって平和な日本を作ることが真の愛国だ」という期待のもと、「民主」と「愛国」が一つの「心情」を表現できた。しかし安定と成長を特徴とする五五年以降の「第二の戦後」には、これらが革新と保守という対立する主張を代表する言葉となっていく。膨大な資料の徹底的な読解と、緻密な分析で裏付けられた論は、幅広い世代から絶賛を浴びた。一方、この徹底ぶりが現代の知識人の戦後認識の浅さも浮き彫りにした。






2007-03-10 (土) 21:29:46 (5153d)