グローバリゼーションの神話

「グローバリゼーションの神話」についてのメモ。グローバリゼーションの神話とは…
HOME > グローバリゼーションの神話

ボワイエ / 世界恐慌 診断と処方箋―グローバリゼーションの神話

グローバリゼーションの神話 †

  • フランス語には「世界化(モンディアリザシオン)」という語が従来から存在する。世界化は、諸国民、諸地域の対概念である
  • アメリカから持ち込まれた「グローバリゼーション」という言葉が成功をおさめている。自由主義原理の浸透によって文字通り国境が消滅して、地球全体が一体化するかのような印象を受ける。
  • 諸国民経済と世界システムの関係に生じている数多くの変容を理解しようという場合、グローバリゼーションという言葉は現在障害となる。
  • フェティシズム(物神崇拝)の対象となっている言葉の正確な意味。
    • 「グローバリゼーション」という用語の起源
    • 多国籍企業に関する文献に散見される。
      • 当初は、需要の世界化という限定された文脈を意味していた。
      • しだいに多様な意味を持つようになり、現在では世界経済の新しい段階を意味するようになっている。
      • きわめて多義的になった結果、この概念は混乱を引き起こしさえしている。
  • 4つの定義を区別できる。
    •  1983年に、経営学者テオドル・レビットは世界全体における市場の収斂を意味するために、グローバリゼーションという用語を提唱した。グローバリゼーションと技術こそは、国際関係を作り上げる二つの主要な要因なのである。したがって、「あたかも世界全体(ないし主要な地域)」が唯一の実体を形成しているように、グローバル社会は相対的に低コストであり、つねに、強力に機能する。グローバルな企業は同一の製品をどこでも同一の仕方で販売する」(Levitt,1983,pp92-93)。なるほど、企業は国民的な相違に適応しなければならない。だが、企業に向けられる特殊な需要を巧みに取り込んだり、再編成できない場合、企業は不承不承、適応するのである。この第一の意味(定義1)で、市場のグローバリゼーションは以前のプロダクト・サイクルに関する見方と対立している。
      • この見方によれば、先進諸国で不要になった製品が途上国で販売される。その意味で、グローバリゼーションは多国籍業の経営、とくに国際貿易に深く係わっている。
    • ◆1990年に、大前研一はこの概念を価値創造の連鎖関係の全体に適用したのだった。連鎖関係は、研究・開発から技術、生産、商品化、サービス、ファイナンスに至るまでをカバーしている。企業は当初国内的な基盤から輸出するが、やがて外国に販売サービス部門を移転し、そして現地国で生産するようになる。さらには、価値創造の連鎖関係の全体を外国の子会社に移転するようになる。これらの四つの段階を経て、この過程は、グローバル統合という五番目の段階に向かうのであり、同一グループに所属する企業は研究・開発、投資、従業員の採用を世界的規模で展開する(定義2)。
      • この場合グローバリゼーションは、巨大多国籍企業の ―世男的次元で統合された― 経営形態を意味している。
    •  多国籍企業が世界生産の重要な部分を担うようになるや否や、多国籍企業は多様な国民的な生産空間を選択するに際して、決定的な主体になる。多国籍企業は流通、投資、金融、研究・開発をめぐって非常に素早く行動できるがゆえに、国民的生産空間は多国籍企業の要求に適応せざるをえない。したがって、グローバリゼーションは、国際化した企業が、かつて国民匡家によって作られていたゲームのルールを自分たちに有利なように定義し直す過程を意味している(定義3)。かくしてわれわれは、企業内の管理の分野を離れて、国際的なシステムの構造に向かうのであり、国際的システムは、本社企業の空間でも、進出先の空間でも、国民的な公的介入を土台にしている。こうしてミクロ経済からマクロ経済に移行するのであり、好ましい私的経営のルールから経済政策の立案、そして国民的制度の構築、再定義に移行する。最後に、この概念は、ブレトンウッズ体制に代替するような国際体制の最終段階よりも、むしろ進行中の変化を意味している。グローバリゼーションの主張者たちはしばしば、進行中の諸傾向のもつ不可逆的な性格を強調するのであり、それほど国民政府の伝統的政策は大企業の戦略を前にして無力化している。唯一の解決策となるのは、したがって公的介入を根本的に定義し直すことであり、また、その結果、地域的、国民的空間をますます流動的になる資本にとり魅力的なものにすることであろう。このように主張したのは、ロバート・ライシユであり、かれは1993年、クリントン政権の労働長官に就任して、グローバリゼーションの時代にふさわしい独自の経済政策を立案したが、大きな成功は収めることができなかったようである。
    • ぁ.哀蹇璽丱螢次璽轡腑鵑蓮⊇祥茲旅餾欸从僂僚段階に対して断絶を画する新しい構図を意味している。従来の国際経済はまさしく国民間(インターナショナル)だったのであり、その変化は諸国民国家レベルで進行する過捏の相互作用によって規定されていた。現代において出現しているのは、グローバル化された経済であり、そこでは、国民経済は、直接国際的レベルで機能する取引や過程のシステムのなかで解体され、再編成されることになる(定義4)。
      • この第四の定義はもっとも一般的で系統立っている。そして、商業資本主義の誕生以来相継起して登場した国際体制の全体に対して質的な断絶を強調するのである。まず、国民国家、ついで結果的に、政府が国内経済のゆくえに対する影響力を完全に喪失するのであり、第二次世界大戦後継承されてきた中央集権的な制度に代わって、地域、都市という政治単位が形成されることになる。これらの政治単位が新たに、多国籍企業が作りだすネットワークにとって必要な拠点となるのである。1995年に『国民国家の終焉』という著作を刊行した大前研一はかくして、「グローバリゼーション」の大予言者となった。他方、この新しいモデルに従う多様な領土空間は相互依存を強めるのであり、同一化ではないにしても、ともかく同質化に向かうような同時的変化を経験することになる。したがって、国民的政治的妥協、さらにローカルな状況という概念に対しても、さようなら、ということになる。何しろ、グローバル化したシステムから離れていて、地理的には近隣の地域に起こる変化よりも、地球の反対側で起こっている事件が巨大都市に直接影響を及ぼす。





2007-03-10 (土) 21:31:44 (5335d)