ケインズ主義的福祉国家

「ケインズ主義的福祉国家」についてのメモ。ケインズ主義的福祉国家とは…
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ケインズ主義的福祉国家 †

  • 生産性の政治」は,単なる自由競争の承認ではなく,政治が生産性向上や繁栄に向けて経済を積極的に誘導するものであり、その考え方はケインズ主義に呼応するものである。
  • ケインズ主義はマクロ経済政策による市場介入を主張するものであり,福祉国家に直接言及するものではない。しかし,ケインズ主義的な市場介入による需要管理,とりわけ積極財政主義が福祉国家を可能にしたと考え,このようにケインズ主義と福祉国家を結びつけて論じられることがある。
  • 市場は基本的に不安定なものであり,自己調整機能をもたないと考えるケインズ主義では,市場が円滑に機能し,持続的な経済発展(成長)を実現するためには,政府がマクロ経済政策(金融財政政策)を通じて有効需要を創り出す必要があると考える。
    つまり,技術革新などによる生産性向上はおのずと需要拡大につながるのではなく,政府が金融緩和や公共事業等によって需要を喚起する必要がある。こうしたマクロ経済政策によって生産性向上が経済成長に結び付き,さらなる生産拡大へとつながる,したがって労働力需要も伸び,完全雇用が芙現する。先進資本主義諸国の問では,政府の介入程度に差があるとはいえ,このようなケインズ主義的市場介入が戦後,共通の合意となった。
  • アイケンべリーによれば,イギリスの戦時内閣は完全雇用政策を重視し,他方,アメリカ国務省は自由貿易擁護の立場をとっていたため,両国の戦後体制への選好は大きく違っていた。にもかかわらず,両国の経済学者や政策専門家たちの間にケインズ主義的合意が存在していたゆえに,ブレトンウッズ体制は実現された。

ケインズ主義と福祉国家 †

  • ケインズ主義的合意は,福祉国家を発展させる大きな背景となった。
    1. 福祉国家は,貧困層の救済のみを目的とするわけではなく,全市民に最低限の生活保障を提供するものであり,最も直接的な社会的保護政策の制度化であると考えられるが、それはケインズ主義的完全雇用政策を前提とするものであった。完全雇用は福祉国家財源の調達を可能にするだけではなく,福祉国家的な社会的保護政策を必要とする集団規模を抑制し,管理可能なレベルにとどめる。つまり,福祉国家は実際の受給者が限られていることを前提とするものであった(今日,高齢化によって多くの先進諸国ではこの前提が掘り崩されている)。
    2. ケインズ主義政策それ自体は再分配政策ではないが,夜警国家から積極国家への転換を促進し,政治の社会経済生活一般への介入を正当化することにつながった。
  • 今日では福祉国家あるいは大きな政府は,経済成長を阻害するものとして評判が悪いが,福祉国家は反市場主義ではないし,必ずしも経済成長と背反するものではない。
    福祉国家は、そもそも完全雇用を前提にするため、経済実績に対して極めて敏感である。
    また、所得保障購買力を底上げし、国内需要の喚起につながる。
    再分配政策を通じて社会的格差を是正することは、階級間和解を容易にし、活発な経済活動の前提となる社会的安定を実現することにもつながる。

他方、福祉国家が労働コストを引き上げることは事実であるが、こうしたマイナス面とプラス面がどのような損得勘定となるかは理論的一般的に答える問題ではない。たとえば、グローバル化のなかで、福祉国家のマイナス面が強調される傾向があるが、実は各国の国内事情によってグローバル化の及ぼす影響は大きく異なる。






2010-01-06 (水) 05:40:51 (2633d)