コンテスタビリティ理論

「コンテスタビリティ理論」についてのメモ。コンテスタビリティ理論とは…
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contestability theory コンテスタビリティ理論

コンテスタビリティ理論 †

 ボーモル(W.J.Baumol)を中心にパンザー(J.Panzar),ウィリッグ(R.willig),ベイリー(E.Bailey)らの仕事から生まれて、一冊の書物としてまとめられている。

 市場への参入という行動と並んで市場からの退出という側面についても分析に光をあて、存在的競争のもつ理論的含意を徹底した点に特徴がある。

 ボーモルらは、もしも市場がコンテスタプル(競争的)であるならば,たとえ公益事業といえども潜在的競争が作用するので,独占企業は超過利潤を獲得できないと考えた。

コンテスタブル市場とは,参入・退出が完全で埋没する投資費用が存在しないことである。

例えば,航空機は固定費用ではあるが,レンタル市場や中古市場を通じて容易に売買可能なので,市場参入退出の障壁にはならないという。そのような市場では新規参入企業は自由にヒット・エンド・ラン戦略を利用できるので,超過利潤がある市場でクリーム・スキミング(おいしいところ取り)できる。

ボーモルたちは,コンテスタブルな市場では航空産業や電気通信産業のような公金事業ですら参入退出規制は不要であり,規制緩和すればよいと主張した。

この理論が1970年代から1980年代にかけてのネットワーク産業の規制緩和論の流れを作ったと言われている。

しかし,実際には,航空産業も電気通信産業も完全なコンテスタブルな市場ではなかったので,規制綬和後,再び寡占化の傾向が進み,再規制が必要だとも言われている。

 以下…
 「コンテスタブル市場」(contestable market)、「持続可能性」(sustainability)というキーワードと基本命題について…

コンテスタブル市場 †

 コンテスタブル市場とは,「参入・退出が自由な市場」と定義される。この定義にある「自由な(free)」とは「費用が一切かからない(costless)」という意味である。したがって,参入が自由とは参入障壁が存在しないこと,すなわち既存企業と潜在的参入企業との間に需要条件・費用条件の格差が存在しないことを意味している。また,退出が自由とは参入企業が退出に際し参入時のコストをすべて回収できること,すなわち埋没費用がゼロであることを意味する。

 さらに,コンテスタブル市場では参入に対する既存企業の反応についても重要な仮定が置かれる。それは「ベルトラン=ナッシュの仮定」と呼ばれており,参入に対し既存企業は参入前の価格を変更せず維持するというもの。ベルトラン=ナッシュの仮定は、シロスの仮定の対極に位置するものであり,この仮定の合意するところは,参入に村し既存企業は即時的な価格引き下げができず,対抗的な行動を取るには時間的遅れが存在する,という点である。

 以上のように,コンテスタブル市場においては既存企業の参入抑止という行動は全く意味を持たない。なぜなら、潜在的参入企業は利潤機会が予想される時に参入でき,既存企業の対抗的な価格引き下げが予想される時に退出できるから。

持続可能性 †

 コンテスタビリティ理論において,完全競争市場の長期均衡と類似した概念が「持続可能性」であり,これは企業数や企業規模などで表される当該産業の構造が変化せず維持され続ける状態を意味する。

 具体的には,以下の3つの条件を満たす価格と産出量の組(価格・産出ベクトル)が存在する状態である。

  1. 市場の需給が一致していること。
  2. 費用をカバーする収入が得られること(企業の長期的存続条件)。
  3. 正の利潤をもたらす参入機会が存在しないこと。

基本命題 †

 完全競争市場での長期均衡は次のような性質を持っている…

  1. 超過利潤は存在しない(価格=平均費用)。
  2. 最小費用での生産が行われる(生産技術上の効率性)。
  3. 価格は限界費用に等しい(資源配分上の効率性)。

 一方、コンテスタブル市場における持続可能な状態での価格・産出ベクトルはどのような性質を持つのか。

コンテスタブル市場では以下の基本命題が成立する。

  1. 超過利潤は存在しない。
  2. 最小費用での生産が行われる。
  3. 2企業以上の場合,価格は限界費用に等しい。

 基本命題の3に「2企業以上」という限定条件が付いているが,これは数学的な十分条件であって,1企業(独占)の場合についても「価格=限界費用」という資源配分上の効率性が実現することを排除するものではない。
 SCPパラダイムが依拠する経済理論は完全競争と独占を両極とし,その中間に現実の市場を位置づけ分析することを内容とするマーシャル以来の新古典派の価格理論であった。そして通常の教科書的理解に従えば,市場における企業数が当該市場の効率性評価の代表的変数であり,企業数の増大とともに効率性の改善がなされ,完全競争の状態に至ってはじめて生産技術上・資源配分上の効率性が達成される。

 基本命題が提示しているのは,完全競争市場においてのみ成立すると考えられていた効率性に関する命題が,それ以外の市場.(コンテスタブル市場)でしかも企業数とは関係なく成立するということである。特に,基本命題の3の意味していることは重要である。
 これは,限界費用と価格が乖離する資源配分上の効率性と非効率性の境界線が,少なくとも独占と複占の間にあるのであってあるのであって,完全競争と「非」完全競争の間にあるのではない,という点である。たとえば,複占市場であれ寡占市場であれ,それがコンテスタブル市場の要件を満たす限り,資源配分上の効率性は達成される。

 コンテスタビリティ理論には,これまでいくつかの理論的問題点(たとえば,ベルトラン=ナッシュの仮定において想定された既存企業の参入に対する行動の論理的妥当性,理論の「ロバストネス(頑強性)」など)やコンテスタブル市場の前提の現実妥当性について疑問が提示されてきているが,規制緩和に伴う競争条件の整備や制度設計を考える上で貴重な示唆を与えている。
 退出という観点を導入した潜在的競争の重要性の指摘や埋没費用の果たす役割についての視点など,コンテスタビリティ理論から学ぶべきことはいくつもある。






2007-03-10 (土) 21:32:05 (4120d)