terrorism
一定の政治目的を実現するために暗殺・暴行などの手段を行使することを認める主義、およびそれに基づく暴力の行使。テロ。
(ドイツ) Terror
〔恐怖の意〕あらゆる暴力的手段を行使し、またその脅威に訴えることによって、政治的に対立するものを威嚇(いかく)すること。テロ。
テロリズムは、心理的威嚇や恐怖心を引き起こすことによって一定の政治的効果をめざすという目的で国家装置や政泊集団によって行使される暴力的手段のことをいう。
テロリズムは一般に、革命時などの政治的に不安定な時期に暴力的手段によって、反対勢力を物理的に抹殺したりまたそれに心理的恐怖心を与える場合に使われる。しかし平時においても、左翼か右翼かを問わず急進的かつ過激な政治集団が一定の政泊的効果をねらってテロリズムを行使する場合がよくみられる。
テロリズムを分類すると、まず第一に、個人的テロリズムと集団的テロリズムに分けられる。
前者はテロルの行使者が個人の場合であり、後者はテロルの行使者が政治集団または国家装置の場合である。19世妃後半のロシアのナロードニキ運動における「人民の意思」派はツァーリ打倒の手段としてテロリズムを行使し、1881年にはアレクサンドル二世が暗殺されるにいたったが、これなどは個人的テロリズムにあたるといえる。だが一般にはテロルの遂行者は集団である場合が多い。
次に、テロルを行使する主体の思想的な傾向によって白色テロリズムと赤色テロリズムとに分けられる。
白色テロリズムは反革命的であり、代表的な例としては1794年のテルミドール反動である。赤色テロリズムは革命的テロリズムであり、フランス革命時におけるジャコバン独裁の恐怖政治や、ロシア革命直後の国内戦での反革命派や白軍にたいする武力的鎮圧がその例である。
テロリズムは集団によって行使される場合が多いと述べたが、これが政治権力の保有者ないし国家装置そのものによって組織的になされる場合には恐怖政治が生まれる。ナチズムにおけるテロリズムの制度化やスターリン主義体制下における「大量テロル」はこの例である。
ナチスは政権掌握以前には街頭での突撃隊によるテロ行為を行い、政権掌握後にもナチ党に反対する勢力にたいするテロ行為を用いたが、1934年のレーム暗殺事件とその後の「強制収容所」はナチズム体制におけるテロリズムの制度化を物語っている。
またスターリン主義体制下においても1934年のキーロフ暗殺にはじまる「大童テロル」が開始され、スターリンその他の政治局員の暗殺、資本主義の復活といった名目でボルシェビキの旧指導者たちが粛清されていった。
これらはナチズムやスターリン主義といった政治体制に内在化されたテロリズムといえる。現代においても外国の反体制運動を支援して行われる国際テロリズムがみられ、ハイジャック事件や無差別発砲事件などが起こっている。
これは大国の政治的圧迫にたいする政治的抵抗ともいえるが、その反面、大国が強大な軍事的武力を背景に行使する政治的圧迫のなかにも構造的で組織的なテロリズムの要素が含まれていることも見落としてはならない。