(ドイツ) deutscher Idealismus
一八世紀末から一九世紀前半にかけてドイツで興隆した体系的哲学の総称。
カントの超越論的観念論に刺激を受け、その二元的性格を克服する形で、全現実が絶対者の自己展開として学的・理性的に把握される。フィヒテ・シェリング・ヘーゲルを代表者とする。
これらの思想を独自の批判哲学によって総合したのが、カント。ドイツでは高度な観念論哲学が展開された。
1)批判哲学の形成
合理論は独断論へ,経験論は懐疑論へとおちいる危険性を学んでいる。カントは,理性そのものを批判的に考察し(批判哲学),理性の可能性と限界を確定する作業を通して,二つの思潮を総合。ガリレオ,ニュートンによって得られた自然科学の成果は,ベーコンとデカルトによって哲学的基礎を獲得したが,カントは,自然科学を生み出す理性そのものを批判的に検討することによって,経験論(→懐疑論)・合理論(→独断論)と いう形で二極分解した近世哲学を再度統合。
2)認識論のコペルニクス的転回
経験論にしても合理論にしても,これまでの哲学は人間の外部の世界(客観)ばかりに目を向けていた。しかし,そもそも認識は人間(主観)の側の認識能力があってはじめて可能となるものであり,まず認識を可能とする主観や理性の能力を批判的に吟味する作業(批判哲学)が不可欠。
このような客観中心の認識論から主観中心の認識論への転換を,コペルニクスの地動説にならって言認識論のコペルニクス的転回という。
3)理論理性
認識はまず,外部の物体(物自体)からの刺激を感性によって直観することからはじまる。しかし,感性的直観からのみ得られた刺激は曖昧としたイメージ(現象)にすぎない。正確な認識が成立するためには,さらに現象を理性の働き(悟性・理論理性)によってカテゴリー(分量・性質・関係・様相)に関連づけ,整理していかなければならない。つまり,正確な認識は感性によって得られた現象を理性によって再構成する作業を経て可能となる(対象は主観によって構成される)。カントはこれを「認識は経験と共にはじまる」と表現した。カントによれば理性が有効に働くのは,感性の直観が及ぶ範囲(時間と空間)に限られる。
4)実践理性と定言命法
対象を認識し自然法則を生みだす理論理性に対し,人間の意志を規定する道徳的作用をもつ理性を実践理性という。カントは実践理性によって打ち立てられる普遍妥当な法則を道徳法則とよんで,自ら打ち立てた普遍妥当な道徳法則に自ら従うとき,意志の自律と自由が可能となる。その際カントは,単なる意志の主観的な原理を格率とよび,それを客観的に普遍妥当な法則にまで高める道徳的命令を定言命法とよんだ。
定言命法に従い意志の自律と自由を獲得した主体を人格という。また個人の人格を手段としてではなく,目的そのものとして尊重する人々の共同体を目的の王国とよんだ。
5)主著
カントの三批判
1)弁証法
ヘーゲルは,事物や認識の発展・運動を捉える方法を弁証法とよんだ。
ヘーゲルによれば,事物や認識は矛盾を契機として正(テーゼ)→反(アンチ・テーゼ)→合(ジン・テーゼ)という段階を経て発展していく。一つの段階は必然的にそれと対立する立場を生みだし,その矛盾・対立が発展の原動力となる。そして,その矛盾を止揚(解決)する運動が事物や認識の発展を可能とする。
2)絶対精神
ヘーゲル哲学の根本原理。世界は絶対精神の弁証法的な自己運動過程とみなされる。
3)人倫
人間の倫理や倫理を実現する共同体をさす。ヘーゲルは,人倫の共同体もまた,家族(正)→市民社会(反)→国家(合)という形で,弁証法的に発展すると考えた。
・家族:愛の共同体だが,人格的独立はいまだ存在しない共同体
・市民社会:独立人格が互いに自己の欲望を追求するが,不自由・不平等が生じる
・国家:市民社会の矛盾が止揚された理想の共同体
4)主著