NEET ニート
―という人の数を集計した。同省では、2002年分もさかのぼって集計したが、1年で4万人も増加しているという。
<内容紹介>
出生率1.29。若年層の経済基盤が弱体するなか、
さらにもうひとつの問題が深刻化していた。2000年に17万人、2003年に40万人、今年
はさらに……。働くことにも学ぶことにも踏み出せないニートが急増している。少子
化が進むなか、日本経済にも根深い影響を与えはじめた「ニート」。この時代の鮮や
かな分析と新しい希望がここにある。
<もくじ>
はじめに/第1章 「ニート」という若者/第2章 ニートに会う/第3章 14歳の
分岐点/第4章 14歳と働く意味/第5章 ニートからの卒業/第6章 誰もがニー
トになるかもしれない/おわりに
毎日新聞 2004年10月22日
フリーライターの曲沼美恵さんとの共著「ニート フリーターでもなく失業者でもなく」(幻冬舎)
がある東京大学助教授の玄田有史さんは「ニートの定義は、日本には、まだない」と説明する。
ニートは「NotinEducation,EmploymentorTraining」の頭文字(NEET)からの造語で、「教育・雇用・職業訓練のどの活動にも属していない」という意味だ。労働経済白書に今年初めて登場した「無業者」(非労働力人口のうち、15〜34歳、卒業者、未婚者であって、家事・通学をしていない者)がニートを念頭に置いた用語とみられるが、これはあくまで、その若者の状態を指しているにすぎない。「ニートは働く意欲がない、働かない若者と受け取られがちだが、それは違う。働きたいが職探しはしていない状態、働くことに希望が持てない若者のことではないか」と玄田さんは指摘する。
確かに、日本版ニートの定義は確立していない。だとすれば、「労働意欲はあるものの……」という前提をつけた方がいい。働く意欲がありながら、職に就けない若者こそ、社会が、地域が、支援すべき対象ではないだろうか。
ただ、玄田さんはこうも言う。「ニートは増えない方がいいと思うが、解決すべき問題なのかどうかは分からない」。例えば、大学を卒業するまでに希望する企業から内定を得られず、自信をなくし、自分の目標さえも見失ってしまったケース。経済的に許されるなら、しばらくはニートになって自分の行く末を考えてみるのもいいかもしれない。そして、少しでも興味を持った業界があれば、アルバイトをして内部を知り、理想に合えば正社員としての就職を目指し、違っていれば別の業界に移ってみてはどうだろう。ニートになることを勧めるつもりはないが、自分の進むべき道、進みたい道を見失ってしまったら、立ち止まるのもいい。ただし、再び歩き出すことが必要だ。
長年にわたって学生の就職活動をサポートしてきた大学職員は「最近の学生は『適職信仰』が強い」と話していた。自分に適した職業があるはずだと固く信じているという。しかし、私自身、新聞記者になって18年目を迎えたが、記者という職業が自分に合っていると思う時もあれば、自分が追いかけていたネタで他紙に先を越され、私は向いていないのではないかと落ち込むこともある。自分は今の職業に向いていないのではないかと考えたことがない人は、かなり幸せな人生を送っていると言えるのではないだろうか。
厚生労働省は来年度から、規則正しい合宿生活をしながら職業訓練が受けられる「若者自立塾」を開設する。同様の事業は、米国で40年前から実践されてきた。16〜24歳を対象にした寄宿制の教育・職業訓練プログラム「ジョブ・コア」である。経済的に劣悪な環境にある若者たちの救済策として展開されており、日本とはやや趣旨が異なるものの、若者の就労支援という目的は変わりない。ただ、ニートの多くは一時的にせよ長期にわたるにせよ、社会とのつながりを欠く若者である。そうした若者が自分から入塾を申し込むだろうか。
「探しものは何ですか ニートという生き方」と題した本紙連載記事(東京、中部本社発行の夕刊社会面、6回)の中で紹介したが、英政府は13〜19歳を対象に、社会とのつながりを持たせるための「コネクションズ・サービス」を展開している。施策の中心は「パーソナル・アドバイザー」で、対象年齢の間は継続して、勉強や進路の相談ができる。薬物やアルコールに関する相談もできるから、生活全般のカウンセラーと言えそうだ。日本にはそうした制度はなく、導入するにはコストもかかるだろう。だが日本の将来を担う若者たちへの投資と思って、導入を検討してみてはどうだろうか。
参照:大手町博士のゼミナール「ニート」(2004年10月5日 読売新聞)
第一生命経済研究所は21日、通学も就労も職業訓練もしていない「ニート」と呼ばれる若者が、2000−05年の間の潜在成長率を年平均0・25%押し下げるとのリポートを発表した。
ニートの増加によって労働力人口が減少し、生産活動が低下するためで、同研究所の門倉貴史・主任エコノミストは「良質な労働力を維持するためにも、予防的なメンタルヘルスケアの充実など早急な対応が望まれる」と警告している。
リポートによると、2000年のニート人口は約75万人だったが、05年には約87万人に増加。15年には100万人を突破し、20年には120万人に達する見通しだ。
ニートを5年間続けた場合の大卒男子の生涯賃金は、一般の大卒男子の4分の3、10年続けた場合には半分に落ち込む。このため個人消費も伸び悩み、国内総生産(GDP)を押し下げるという。
内閣府の「青少年の就労に関する研究会」(委員長・玄田有史東大助教授)は22日、学校に行かず、働かず、職業訓練にも参加しない「ニート」と呼ばれる若者が2002年には85万人だったとする集計を公表した。
厚生労働省はニートの定義に「家事の手伝いもしない」ことを加え、2003年で約52万人としているが、研究会は「『家事手伝い』は就労意欲のないケースが多い」としてニートに含めたため、数字がふくらんだ。
同研究会では、ニートは1992年より18万人増え、85万人のうち就職を希望しながら求職活動をしていないのが43万人、就職を希望していないのが42万人だったとしている。
また、内閣府の「若者の包括的な自立支援方策に関する検討会」(座長・宮本みち子千葉大教授)は同日、ニートの就業支援として地方自治体への若者支援機関「ユースサポートセンター」の設置などを求める中間報告をまとめた。
中間報告では、「ユースアドバイザー」を同機関や自治体、学校などに配置し、若者を長期にわたって個別に支援する仕組み作りも提言している。