ネオオーストリアン
オーストリア学派
ローザンヌ学派,ケンブリッジ学派と並ぶ限界革命以後の近代経済学系の三大学派の一つ。限界革命トリオのC.メンガーを始祖とし,E.ベーム=バウェルク,F.ウィザーによって確立された学派で,ウィーン大学を中心に形成されたところからウィーン学派とも呼ぶ。メンガーはドイツに伝統的な主観価値論の精密化をはかり,先駆者やW.ジェボンズやL.ワルラスとは独立に独自の論理的方法で限界効用価値論(「限界効用」という用語はメンガーのものではない)を定式化し,さらに生産財(高次財)の価値の説明にも限界効用理論を適用し,帰属理論の端緒を開いた。また『国民経済学原理』公刊後,主観価値論の哲学的基礎づけやG.シュモラーとの有名な方法論争に精力を傾注した。彼の理論はベーム=バウェルク,ウィザーによって継承発展させられ,1880年代なかばには学派を形成するにいたった。ベーム=バウェルクは資本や利子の理論面でのちに大きな影響を及ぼす業績を上げ,ウィザーはメンガーによって先鞭をつけられた生産要素の価値をも消費財の価値から説明しようとする限界効用一元論的立場を帰属理論として定式化した。限界革命以後,経済現象の解明において限界効用価値論を最も重要視し,限界効用一元論的立場を貫こうとしたのはこの学派で,従来ときとして使われる限界効用学派という用語も狭義にはオーストリア学派をさす。このあとH.マイヤー,L.ミーゼス,F.ハイエク,G.ハーバラー,F.マハループ,O.モルゲンシュテルンなどこの学派の第三世代の俊秀が輩出し(第三世代のみをウィーン学派と呼ぶこともある),特に第1次世界大戦後はなばなしく活動したが,第二世代までほど他の学派から区別できる特徴はなくなり,依然主観価値論を重要視し,一般均衡理論が浸透しながらも因果的分析を重要視する者が多いこと,ベーム=バウェルク,J.ウィクセルの影響を受けて独特の貨幣的景気理論が展開されたことなどが特徴。思想的には彼らはすべて自由経済体制の信奉者で,その何人かは今日の新自由主義論の第一人者となっている。ナチスの政権掌握とともに第三世代の多くは国外(おもにアメリカ)に亡命し,今日では地域的意味でのオーストリア学派は消滅したといってよいが,近年J.ヒックスらによって,おもに資本理論や時間要素の分析面で同学派の復活がはかられているのが注目される。