fringe benefit フリンジベネフィット
社員を大事にする会社=三連星
フリンジ・ベネフィットというコトバがある。フリンジはふさ、ふさ飾りの意。正規の賃金以外の諸手当、健康保険、失業保険、年金、更には社宅から家族手当までふくまれる。
日本のフリンジ・ベネフィットは先進国の中でも高い方と言われた。同じ時給、年俸でも実質的には手厚いのである。
戦後の労働組合が強大だったころ、高度成長の求人難、歴史的な家族主義、それらが混然となり、税制も支援して「働きやすい職場」をつくり上げた。
だがどうも昔話になりそうだ。企業経営者は二言目には「株主のために利益極大化を」要求される。フリンジ・ベネフィットはコストである。
会社がもうかっている時は大盤振る舞いもできるが、セチがらくなってくると「削れるものはないか」とウの目タカの目だ。コストカッター、ゴーン社長が神格化される時代である。フリンジ・ベネフィットが無傷のままでおられるワケがない。
労働組合の力も弱まっているし(組織率20%!)、社員の個人主義も高まっている。「社宅や家族手当よりもっと高い賃金を」と成果主義の支持が高い。すべて自己責任、米国的だねえ。
しかし、よく考えよう。コスト軽減は短期の計算ではないか。1期2期はたしかに収益はプラスになるかもしれないが、そのうちに「ソレがアタリマエ」になってしまう。代わりに失われるものは社員のモラール(士気)であろう。
家族手当がどれだけ生産性に寄与するか。これは計算不可能である。だが、社員の再生産、「あの会社に勤めていては結婚もできない」ような企業がいくらもうけてもホメる気にはなれない。政府税調会長様、いかがですか。(三連星)
毎日新聞 2005年6月28日 東京朝刊