primary balance プライマリー・バランス/基礎的財政収支
利払費を除いた財政赤字。
すなわち、歳出マイナス利払費マイナス税収が「ネットの収支の赤字幅」でこれを「プライマリーバランスの赤字幅」という。「一次的(あるいは基礎的)財政赤字」ともいう。これは、公債の新規発行額マイナス公債の利払費にも等しい。家計の例であれば、収入から生活費を差し引いたものがプライマリー・バランスの黒字額になる。この財政赤字は、財政収支が長期的に維持可能であるかどうかを判断する基準として有益である。通常の財政赤字は、歳出マイナス税収で定義される。プライマリー・バランスは通常の財政赤字とは異なる定義であり、比較的新しい概念である。単年度の財政赤字ではなくて、中長期的な財政赤字の累積を問題とする際に、有益な指標である。近年、財政赤字の関心が、ケインズ的な財政政策の効果から、中長期的な財政政策の維持可能性に向けられるようになるにつれて、プライマリー・バランスでの財政赤字が注目されるようになった。
日本の論点(2004.12.23)
05年度末の国債発行残高は約538兆4000億円で、約511兆円と見込まれる国内総生産(GDP)を初めて上回る見通しだ。いっぽう、国と地方を含めた長期債務残高もGDPの1.5倍の774兆円に達し、国民1人あたり606万円の借金をしている計算だ。
プライマリーバランスを均衡させるか、黒字にするためには、支出を減らすか、税収などの収入を増やすか、両方を同時平行するかだが、財務省の試算によると、財政赤字が現状のまま推移した場合、10年後には消費税率(現行5%)を21%に引き上げるか、社会保障費などの歳出項目をいまの3分の2規模に削減しないと、プライマリーバランスの赤字は27兆8000億円に増大するという。つまり、財政再建のためには、徹底した歳出削減と、一定の増税は避けられないというわけだ。識者の間でも、少子高齢化社会に突入しているいま、法律や制度で支出額が決められている社会保障費の削減は困難なことから増税を支持する声が強まっている。
プライマリーバランスは、1993年度予算で初めて約2兆5000億円の赤字になったのを皮切りに、その後、景気対策のための財源不足を国債の大量発行によって補ったため,赤字幅が拡大を続け、03年度には過去最高の20兆4000億円を記録した。財政赤字の増大を危惧した宮沢財務相(当時)は01年3月、国会答弁で「わが国の財政は破局に近い状況にある」との危機感を露わにした。このあと小泉首相は、01年5月、所信表明演説で、02年度予算で国債発行を30兆円以下に抑えることと、「持続可能な財政バランスを実現するため、例えば、過去の借金の元利払い以外の歳出は新たな借金に頼らない」と公約し、具体的には「プライマリーバランスを2010年代初頭に黒字化する」との目標を掲げた。それから4年、厳しい財政状況に変わりはない。