ポスト・ケインズ学派

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ポスト・ケインズ学派 †

1960年代後半になると,先進資本主義諸国でも〈しのび足〉のインフレーション(クリーピング・インフレーション)は〈駆足〉のインフレーション(ギャロッピング・インフレーション)に転化していき,公害や都市問題が顕在化して,モデルの背後にある価値判断や所得分配問題について意味するところが問われることにもなった。70年代に入ると,戦後の世界資本主義体制を支えたブレトン・ウッズ体制が崩壊するに至り,国内均衡と対外均衡を両立させるポリシー・ミックスが求められるなかで,有効需要創出政策としてのケインズ政策は挑戦を受けたのである。

こうした状況下で,J. V. ロビンソンが71年12月,アメリカ経済学会の記念講演において〈経済理論の第二の危機〉を指摘したことは大きな関心を呼んだ。ロビンソンはケインズに続くポスト・ケインジアンの領袖として《一般理論》の一般化のために蓄積と成長・分配の問題に取り組んだが,そのさい,1960年代後半以降の先進資本主義諸国の現状がケインズ自身の直面した1930年代と識別されるものであることに注意を払おうとした。つまり,ケインズ政策が導入され,組み込まれた後に展開される現代の市場機構がはらむ問題は,ケインズが直面した第一の危機を克服する過程を経て立ちあらわれてきたのであり,そうであるならば,有効需要の概念はその量的次元においてのみならず,投資の質,雇用の内容,所得分配が動学的マクロ経済的循環のなかで果たす役割においてこそ論じられねばならないというのである。しかもそのさい,企業組織や市場機構が展開し,変貌を遂げるなかで,現代経済の制度的詳細を記述することが肝要であり,この点でより限定された意味での〈ポスト・ケインジアン〉は,ケインズの貨幣経済的認識と M. カレツキの寡占的経済機構の分析を二大支柱とすることになるのである。こうしてポスト・ケインジアンがケインズ革命を徹底せんとする方向に動くとき,市場における価格調節機構について批判的理解に立ち,新古典派総合におけるような調和論的なそれとは識別されることに注意が払われなければならない。しかしこうした現代経済についての批判的理解は,ロビンソン以外にも,P. スラッファ,N. カルドア,R. F. カーン,パジネッティ Luigi Lodovico Pasinetti(1930‐ ),宇沢弘文(1928‐ )ら有力な経済学者を数え,現代資本主義の分析と政策処方箋の提出の双方において注目されてきたのである。

ポスト・ケインズ学派 †

【経済‐経済理論】[post Keynesian school]
第二次大戦後、ケインズ理論の発展を意図した経済学者たち、ポスト・ケインジアンといわれる。その第一のジェネレーションは、ケインズの影響を強く受けており、その理論の長期化を意図すると同時に、価格論として寡占市場を前提とするというような共通地盤を持っていた。ハロッド(R.F.Harrod)は経済の適正成長率を明らかにする理論を提出し、カレツキ(M. Kalecki)、カルドア(N. Kaldor)は分配理論や景気変動論を構想し、ロビンソン(J. Robinson)は、新古典派の理論を批判して、資本論争や限界生産力説批判を続け、いずれも学界で大きな地位を占めた。だが、それに次ぐ第二のジェネレーションはスラッファの経済学の流れをも受け新古典派と激しく対立しているが、新しい理論を提起することに苦渋し、その主流はイギリスを離れイタリアに移った感がある。






2007-03-10 (土) 21:35:09 (4272d)