メインバンク制と政府規制

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メインバンク制と政府規制 †

  • 状態依存的ガバナンスにおけるメインバンクの役割は、一面から見ると、メインバンクが、企業の財務状態のモニタリング(情報収集と評価)を、他の投資家から委託されている仕組みと解釈できる。では、理論的に状態依存的ガバナンスによって割り当てられた役割を、メインバンクが遂行するインセンティブとは何か?
  • 企業の財務状態が悪化した場合、メインバンクも再建・清算などの費用を負担しなければならない。場合によっては、メインバンクは、そのような役割を演ずるより、担保権を行使して債権を回収し、ガバナンスの舞台から身を引くほうがはるかに面倒が少ないこともありうる。
  • にもかかわらず、高度成長の初期から1970年代の半ばまでは、メインバンクがそのような責任回避行動をとろことは稀であった。そこにはメインバンクとしての責任を取ることによって、それなりの利得(メインバンク・レント)が保証されていたからである。
  • そのようなレントの源泉は、高度成長期の日本の場合、市中銀行の地位に対する参入を厳密に制限し、また預金利率をワルラス的均衡水準から低く、しかし実質率は正の水準を保つように、コントロールしていた銀行当局の規制があった。
  • そのような状態を、トーマス・ヘルマン、ケビン・マードック、ジョーゼフ・スティグリッツらは、「金融抑圧」(financial repression)と区別して、「金融抑制」(financial restraint)と呼んだ。
  • 「金融抑制」というレントの可能性が、銀行をしてメインバンクとしての地位の獲得とその責任の遂行のインセンティブになった。参入に対する政府規制がなければ、違った均衡、たとえば銀行が積極的にコーポレートガバナンスに関与しない均衡もありえた。ここに制度的補完性の可能性が示唆される。
  • 今日、金融市場の国際化によって政府の金融規制がしだいに整合性を失い、メインバンク制度のコーポレート・ガバナンスにおける有効性は試練にさらされている。それがまたさまざまな制度的補完関係を通じて、日本のシステム全体に整合的な改革を迫っているといえる。





2007-03-10 (土) 21:35:36 (5060d)