西洋音楽
(1)中世音楽(400年〜1450年ごろ)
- キリスト教,騎士道文化,宮廷文化と密接に関連しながら発展した。音楽の場合はとくに教会聖歌という形で親しまれた。
- グレゴリオ聖歌
- ローマ教会の単旋律聖歌として900年頃,グレゴリウス一世が完成。
- ポリフォニー
- グレゴリオ聖歌と同時期に誕生し,12〜13世紀に発達した。2つ以上の異なった旋律を重ねるもの。ノートルダム楽派で大成された。
- 世俗的歌謡
- 騎士道文化の中で開花した,吟遊詩人によるもの。ポリフォニーと同時期に発達。
- アルス・ノバ
- 14世紀に発達した,ポリフォニーに人間味を加えたもの。ノートルダム楽派に対して新しくおこった音楽法。
- ブルゴーニュ(ブルグンド派)楽派
- 15世紀前半に発達した、後の三和音的和声の基礎を築いた。
(2)ルネサンス音楽(1450年〜1600年ごろ)
- フランドル楽派
- ミサ曲やモテット(声楽曲の一種)の分野で模倣対位法による合唱ポリフォニーを発達させた。
- 多声歌曲
(3)バロック音楽(1600〜1750年頃まで)
- 歌詞の内容に即した,情感あふれる声楽様式,異質な響きの結合による豊かな表現を特徴とする。それまでの音楽は声楽中心だったが,この時代から声楽と楽器が対等の地位を占めるようになった。伝統的な教会音楽が新たな装いでつくりつづけられる一方,オペラ,オラトリオ,カンタータ,ソナタ,協奏曲,フーガ,組曲など多くの新しい形式が誕生した。華やかなイメージの作品が多い。
- イギリス
- [パーセル](1659〜1695)
- この時代のイギリスオペラ最大の作曲家。王室付きの音楽家として活躍した。主な作品「ディードとエアネス」「アーサー王」
- ドイツ
- [バッハ](1685-1750)
- 音楽の父と呼ばれた。彼の音楽はルネサンス音楽やそれまでのバロック音楽の集大成ともいうべきものである。教会音楽,管弦楽曲を数多く作成した。主な作品「トッカータとフーガ」「管弦楽組曲第2番・第3番」「マタイ受難曲」「ブランデンブルク協奏曲」「G線上のアリア」
- [ヘンデル](1685-1759)
- バロック音楽の巨匠。オペラ,オラトリオの分野で作品を残す。音楽の母と呼ばれる。後半生をイギリスで過ごす。主な作品「メサイア」「水上の音楽」「ハレルヤ」
- イタリア
- [モンテヴェルディ](1567-1643)
- オペラの父と称される。歌劇・協奏曲形式の音楽の基礎を確立た。主な作品「アリアンナ」「ポッペアの戴冠」「オルフェオ」
- [ヴィヴァルディ](1678-1741)
- 弦楽器のための作品を多く作成。合奏協奏曲を確立した。主な作品「調和と幻想」「四季」
(4)古典派(1770年〜1820年頃)
明和な和声に支えられた上声旋律の優位と,純音学的な音の結合を重視する絶対音楽の理念にもとづいて均整の取れた形式美を追求する。上品で洗顔された音楽。整然としたソナタを含む四つの楽章にその特徴が反映されている。
- [ベートーヴェン](1770-1827)
- 古典派音楽を集大成し,ロマン派への道を開いた。ドイツで活躍。難聴に苦しみ聴覚を失った。ハイドン,モーツァルトと並んで古典派三巨匠とよばれる。
- 主な作品
- 交響曲第3番「英雄」、第5番「運命」、第6番「田園」、第9番「合唱」、ピアノ・ソナタ「月光」「熱情」「悲愴」
- [ハイドン](1732〜1809)
- 交響曲の形式を確立し,交響曲の父と呼ばれる。古典派三巨匠の一人で,モーツァルト,ベートーヴェンに大きな影響をあたえた。
- 主な作品
- 交響曲「軍隊」「時計」「驚愕」「告別」オラトリオ「天地創造」「セレナーデ」、弦楽四重奏曲「皇帝」
- [モーツアルト](1756-1791)
- 古典音楽を確立。幼いころから楽才を示した夭折の神童であった。
- 主な作品
- 歌劇「フィガロの結婚」「魔笛」「ドン・ジョバンニ」、ピアノ・ソナタ「イ短調」、交響曲41番「ジュピター」「レクイエム」、セレナード「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」
(5)ロマン派(1820年〜1900年頃)
ロマン主義にかわって登場した音楽潮流で,古典派が形式美を重視するのに対して,個人の主観的感情表現を重視する。形式,リズム,和声などの自由を求めて,古典派にない新しい様式や技法を開拓。
- ドイツ・オーストリア
- [シューマン](1810-1856)
- ドイツロマン主義の精髄を代表する作品を数多く生み出した。歌曲,ピアノ曲を多作。主な作品「謝肉祭」「子供の情景」「詩人の恋」
- [ワーグナー](1813-1883)
- 音楽・詩歌・演劇を総合し楽劇を創始した。主な作品「タンホイザー」「トリスタンとイゾルデ」「ローエングリーン」
- [メンデルスゾーン](1809-1847)
- 古典主義的ロマン派の巨匠。均整と形式美を重んじる古典派と詩情を重視するロマン派の調和をめざした。バッハらの宗教音楽を復活させた。主な作品交響曲「スコットランド」「イタリア」、劇音楽「真夏の夜の夢」
- [ウェーバー](1786-1826)
- ドイツ国民歌劇とロマン派歌劇の創始者。オペラの発展に大きな功績があった。主な作品、オペラ「魔弾の射手」、ピアノ独奏曲「舞踏への勧誘」
- [ブラームス](1833〜1897)
- バッハ,ベートーヴェンとともに三代Bといわれる。主な作品「交響曲第一番」「ハンガリー舞曲」
- [リヒャルト・シュトラウス](1864-1949)
- 後期ロマン派最大の大家。オペラ,歌曲,交響詩の分野で功績を残した。主な作品、交響詩「英雄の生涯」「ツァラトゥストラはかく語りき」
- [シューベルト](1797-1828)
- 近代歌曲の創始者。歌曲の王とよばれる。主な作品「冬の旅」「魔王」「未完成交響曲」「美しき水車小屋の娘」「野ばら」
- [ヨハン・シュトラウス](1825-1899)
- ワルツの王とよばれる。主な作品
ワルツ「美しき青きドナウ」「ウィーンの森の物語」「皇帝円舞曲」
- [マーラー](1860-1911)
- 後期ロマン派に属する。主な作品:テノールとアルトの独唱ための交響曲「大地の歌」,交響曲第一番「巨人」
- イタリア
- [ロッシーニ](1792〜1868)
- イタリア歌劇の先駆者。喜歌劇を得意とする。主な作品:歌劇「ウィリアム・テル」「セビリアの理髪師」
- [ヴェルディ](1813〜1901)
- 歌劇作曲者。主な作品:「リゴレット」「椿姫」「アイーダ」「運命の力」「オテロ」
- [プッチーニ](1858〜1924)
- 感傷的で美しい旋律。主な作品:「蝶々夫人」「トスカ」「ラ・ボエーム」
- ポーランド
- [ショパン](1810-1849)
- ピアノの詩人とよばれる。主な作品:ピアノ独奏曲「英雄ポロネーズ」「子犬のワルツ」「雨だれ」
- ハンガリー
- [リスト](1811-1886)
- ピアノの魔術師とよばれ,交響詩を確立。主な作品:ピアノ独奏曲「ハンガリー狂詩曲」「愛の夢」
- フランス
- [サン=サーンス](1835-1921)
- フランス国民音楽を確立。主な作品:組曲「動物の謝肉祭」「サムソンとデリラ」「死の舞踏」
- [ビゼー](1838-1875)
- 叙情性と簡潔な旋律美で,劇音楽にすぐれた作品を残した。自らの音楽に明るい南欧的色彩を取り入れた。主な作品:オペラ「カルメン」,組曲「アルルの女」
- [ベルリオーズ](1803〜1869)
- フランスロマン派の先駆者で,曲の芸術性のみを重んじるこれまでの絶対音楽に対して,音楽にその曲の観念や理念を反映させる表題音楽を生み出した。主な作品:「幻想交響曲」,「ローマの謝肉祭」,「ファウストの劫罰」
- ロシア
- [チャイコフスキー](1840-1893)
- ロシアという民族的枠組みをこえ,西欧的普遍性を与えた。交響曲とバレエ音楽を得意とした。主な作品:交響曲第6番「悲愴」,バレエ音楽「白鳥の湖」,「くるみ割り人形」
(6)国民楽派(1850年〜1900年頃)
- 国民楽派はイタリア,ドイツ,フランス,オーストリア以外の民族地域に起こった国民主義音楽。とくに国民楽派とはロシア国民楽派をさす場合が多い。
- ロシア
- [ムソルグスキー](1839-1881)
- ロシア国民楽派の中でも,特に個性の強い作風で知られる近代音楽の先駆者。素朴で写実的な曲風をもつ。バラキレフ,キュイ,ボロジン,リムスキー=コルサコフらとともにロシア国民学派の五人組とよばれる。主な作品:交響詩「はげ山の一夜」,組曲「展覧会の絵」
- [リムスキー=コルサコフ](1844-1908)
- 管弓玄楽を得意とした作曲家。主な作品:「くまんぼちの飛行」「スペイン奇想曲」、交響組曲「シェエラザード」
- チェコスロバキア
- [ドヴォルザーク](1841-1904)
- 民族的な色彩(チェコ・スラブ風)が豊富な作風で知られる。主な作品:交響曲第9番「新世界より」
- [スメタナ](1824-1884)
- 農民の生活感情を織り混ぜた,ボヘミア特有の郷土色の強い作品で知られる。主な作品:交響詩「わが祖国」より「モルダウ」
- その他の国々
- [グリーグ](1843-1907) ノルウェー
- [シベリウス](1865〜1957) フィンランド
- 主な作品:交響詩「フィンランディア」,組曲「カレリア」
(7)印象派(1890年〜1915年頃)
- 雰囲気的な印象を表現しようとするもので,印象主義絵画とのある種の親近性からこの名でよばれる。音楽の論理的構造よりも響きの独立性を重んじ,伝統的な長調・短調の調性から離脱して,和声や旋律において現代音楽への門戸を開いた。
- フランス
- [ドビュッシー](1862-1918)
- 近代印象主義音楽を確立。これまでの音楽形式を棄て,感覚的印象・夢幻的気分の演出に成功した。主な件品:交響詩「海」,「牧神の午後の前奏曲」,ピアノ独奏曲「子供の領分」、「亜麻色の髪の乙女」
- [ラヴェル](1875-1937)
- 管弦楽技法の天才。フランス古典主義を踏まえた新古典派。主な作品:管弦楽曲「スペイン狂詩曲」,バレエ音楽「ボレロ」「水の戯れ」
- イタリア
- [レスピーギ](1879-1936)
- ドビュッシー,ラヴェルらに影響をうける。主な作品:交響詩ローマ3部作「ローマの泉」「ローマの松」「ローマの祭」
(8)現代
多くの音楽からの諸影響から多様な音楽性がみられる。
- オーストリア
- [シューンベルク](1874-1951)
- 現代音楽の基礎を作り,指導的役割を果たした。無調音楽で知られる。主な作品:交響詩「ペリアスとメリザンデ」「グレの歌」
- ハンガリー
- [バルトーク](1881-1945)
- ハンガリー民謡を集大成。無調主義。主な作品:「弦楽器・打楽器・チェレスタのための音楽」,ピアノ曲集「ミクロコスモス」,「青ひげ公の城」
- ロシア
- [ストラヴィンスキー](1882〜1971)
- 主な作品:バレエ音楽「火の鳥」「春の祭典」「ペトルーシュカ」
- [プロコフィエフ](1891-1953)
- 不協和音を駆使。主な作品:交響的おとぎ物語「ピーターと娘」「第7交響曲」、バレエ組曲「ロミオとジュリエット」
- [ハチャトリアン](1903-1978)
- 多彩な民族的語法を取り入れた作品で有名。主な作品:バレエ音楽「ガイーヌ」「スパルタカス」「アルメニア共和国国歌」
- [ショスタコービッチ](1906-1975)
- ネオロマン主義。主な作品:交響曲第5番「革命」、オペラ「鼻」「マクベス夫人」、バレエ音楽「黄金時代」「森の歌」
- アメリカ
- [ガーシュイン](1898-1937)
- シンフォニックジャズの確立者。映画音楽で有名。主な作品:「ラプソディー・イン・ブルー」「パリのアメリカ人」「ポーギーとベス」
- [バーンスタイン](1918-1990)
- ミュージカル「ウエストサイドストーリー」より「シンフォニックダンス」
- [ジョン・ウィリアムス]
- 管弦楽を得意としている。映画音楽で有名。主な作品:「スターウオーズのテーマ」「ETのテーマ」