快楽主義
(かいらくしゅぎ)
hedonism
快楽を最高価値の人生の目的と考え、行動の正しさや義務の基準とみなす倫理学の立場。目的論の一形態で、目的となる相手により、利己主義、利他主義、功利主義のいずれにもなりうる。古代ギリシアのエウドクソスやキレネ学派、エピクロス学派、ホッブズ、イギリスの功利主義者たちに著しい。快楽に質的差を認めず、快楽計算を可能と考えるベンサムの量的快楽主義と、快楽に質的優劣を認めるJ・S・ミルの質的快楽主義が区別される。人間本性は快楽を求めるようにできていると唱える心理的快楽説は、快楽主義を有力に支援し、前述の快楽主義者たちやフロイトなどにもみられる。
快楽主義の問題点は、(1)目的論一般の制約をもち、(2)心理的快楽主義が決め手を欠く仮説であること、(3)快楽の量的計算には困難があり、(4)善である多くの目的を不当に快楽に還元し、(5)故意に求めぬときにかえって快が得られる「快楽主義の逆説」hedonistic paradoxを伴うことなどにある。 <杖下隆英>
カイラス山脈