企業の理論

「企業の理論」についてのメモ。企業の理論とは…
HOME > 企業の理論

ヴェブレン

企業の理論 †

  • 彼のシカゴ時代も終わりに近い1904年に出版された。その書物は、近代資本主義の本質と運動法則に関する彼独自の分析を提示したものであり、「産業」と「企業」との二分法を基礎とした。
  • ヴェプレソによれば、近代資本主義は機械制産業と営利企業との二重構造においてとらえることができる。「産業」は、人間の福祉に寄与する財貨の生産に関係するが、「企業」は、福祉よりはむしろ企業利潤の極大化をねらうのが普通である。人間の福祉の向上のためには「生産的効率」が重視されなければならないが、現実には、「金銭的原理」 によって動かされる営利企業が支配している。営利企業の企業者は、利潤追求のためには、効率的生産を抑制し、企業合同を通じて市場の戦略的支配さえねらおうとするかもしれない。
  • このような「産業」と「企業」、「生産的効率」と「金銭的利潤」との二分法に対応するのが、旧来の物的生産手段としての資本概念と、「貨幣価値の資金」というヴェプレソの資本概念との区別である。現代の株式会社制度の下では、資本は一定の物的生産手段の形態を取るのではなく、むしろ株式会社の将来の予想収益力を資本化したものである。
  • ヴェブレンは、資本の特徴をのれんの中に見た。のれんとは、現代企業における確立された慣習的業務関係・正直な取引の評判・営業権や特権・商標・銘柄・版権・秘密などに守られた特殊工程の排他的な使用、特定の原料資源の排他的な支配を含むような概念である。
  • のれんは、社会全体に対しては何の実質的利益ももたらさないが、その所有者には格差利益をもたらす。そうした格差利益が、その資本化の基礎となるのである。
  • さらに、以上のような二分法に加えて、ヴェブレンは「自然経済」と「貨幣経済」とを区別し、景気循環の問題に接近しようとする。従来、景気循環の問題は、産業(生産と消費)の側、すなわち「自然経済」の側からアプローチされてきたが、営利企業(物価・収益・資本など)の側…すなわち「貨幣経済」の側からは追求されてこなかった。だが、景気循環は主として営利企業の現象であって、しかもそれはその起源や発現形態の点で物価下落か物価騰貴かの価格変動の現象である。
  • ヴェプレンは、こうして、貸付信用を利用して金銭的利得を増大させようとする営利企業の行動が、その事業ののれんや担保物件の価値の変動と結びついて、必然的に景気循環を生み出していく過程を解明していく。
  • 機械制産業の効率の増大は、産業設備の相対的な過剰生産をもたらすとともに、利潤のたえざる低下と長期的不況への傾向が生まれるであろう。ヴェブレンは、1870年代以降のアメリカの現実に注目しながら、幸運な時期を除いて、いまや不況が通則になったことを指摘する。そういう慢性的不況に対する営利企業の反応としては、一つには、過当競争を排除し、利潤を確保するための企業合同の拡大、もう一つには、財貨の不生産的消費の増大(軍事費の増大や戦争)が考えられる。
  • ところが、ヴェブレンによれば、立憲政府は本質的に企業の政府であるから、不況からの脱出を図るために政府または議会を利用しようとする。営利企業は政府を通じてナショナリズムを鼓舞し、その企業政策はますます好戦的になっていく。しかし、営利企業体制の軍事化は、近代資本主義の基礎である近代科学や機械的技術にもとづく思考習慣と矛盾するにいたり、それは結局、営利企業の衰退をもたらすことになる。

 …権威や神聖な威厳は、機械技術にも属していなければ、近代科学にも、企業取引にも属していない。企業界によって絶えず促進される積極的政策や貴族的理想が、どしどしつくり出されるかぎり、その論理的帰結は、近代をそれ以前の時代から区別するような文化的様相の衰退ということである。そのなかには、営利企業それ自体の衰退がふくまれている。(p.315)






2007-03-10 (土) 21:38:15 (4941d)