機能主義

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機能主義 †

社会現象を一つの全体的なシステムととらえ、それを構成する諸要素のはたらきを明らかにしようとする方法論的立場。機能分析。機能論。

機能主義は慣習、制度、価値などの社会的諸現象を、それらが社会のなかで果たす機能によって説明しようとする理論であり、1920年代、マリノフスキーとラドクリフ・ブラウンの2人の人類学者によって創始された。
 彼らは両者とも長期間の野外調査ののちに、それまで主流を占めていた文化進化論や伝播(でんぱ)論に対し、全体としての文化を個々の文化要素に分割し、統一体としての文化から切り離して扱っていると批判し、一つの社会のなかの文化要素は一見、独立していて無関係にみえても実は相互に密接な関係をもち、有機的に結び付いているのだと主張した。したがって、個々の慣習や制度を理解するためには、それらが全体の文化のなかでどのように「機能」しているのかを究明しなくてはならないとした。
 マリノフスキーはメラネシアのトロブリアンド諸島の調査で、社会、宗教、経済など生活全般にわたる資料を収集し、一つの制度がいかに社会組織、経済、宗教などと密接に関連しているかを明らかにした。彼の理論は、生物としての人間から始まり、他の動物と同様の基本的な生物学的要求と、集団生活を存続させるための派生的・文化的要求があるとし、これらの要求に応じるためにさまざまな制度、経済、教育、政治組織が存在するのだとした。したがってマリノフスキーのいう「機能」とは、個人の生理学的要求の充足と、ある制度が文化全体のなかで果たす役割をも含む、広い概念である。
 一方、ラドクリフ・ブラウンはベンガル湾東部のアンダマン島での調査により、この地域の儀礼が人々の連帯意識を強化し、社会的結合を高め、社会の統一にいかに貢献しているかを示した。彼によれば、社会体系はその維持・継続のためには一定の「存在のための必要諸条件」を満たさなければならないという前提があり、生物の有機体と社会体系のアナロジーによってこの前提を主張した。生物組織の維持がそれぞれの細胞や組織の活動によって保たれるように、社会体系もまたそれを構成する諸要素の正しい活動によって保たれるとした。彼の「機能」とは「部分がそれを含む全体社会の活動に対してなす貢献」であり、たとえば、ある慣習の機能とはそれが社会構造の維持に対して果たす役割である。ラドクリフ・ブラウンと彼の後継者たちの機能主義はマリノフスキーの機能主義と区分して構造機能主義とよばれることがある。
 その後、機能主義理論に対してはいくつかの批判が加えられた。社会の統合・均衡が強調され、社会変化を正常な状態からの逸脱として扱っており、かならずしも現実に即さない静的なモデルを考えていて、社会や文化の変動を扱うのには不十分であるとか、とくに歴史的研究を軽視する傾向があるなどの批判である。また、これと関連して、社会における統合的な力を過度に強調し、葛藤(かっとう)や非機能的要素を取り扱うのに欠けている、との批判も加えられる。以上のマリノフスキーとラドクリフ・ブラウンによって創始された機能主義は、その後、エバンズ・プリチャードやフォーテスに受け継がれ、さまざまな批判を受けたが、その基本的な考え方は、現在ではむしろ文化人類学では常識として扱われるようになっている。〈豊田由貴夫〉
【本】ラドクリフ・ブラウン著、青柳まち子訳『未開社会における構造と機能』(1975、81・新泉社) ▽マリノフスキー著、寺田和夫・増田義郎訳『西太平洋の遠洋航海者』(『世界の名著59 マリノフスキー、レヴィ=ストロース』所収・1967・中央公論社)






2007-03-10 (土) 21:38:22 (4212d)