拒否点

「拒否点」についてのメモ。拒否点とは…
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比較政治経済学

拒否点 †

インマーガレット「拒否点」

  • 政治学者のイマグートの研究(lmmergut,1992)
    • フランス,スイスそしてスウェーデンの健康保険政策の比較。
      • スイスは国民保険制度の導入に失敗し,政府の役割は民間保険に補助金を出すという限定されたものにとどまった。
      • フランスでは国民保険制度が導入され,民間病院での医療行為に対しては強制加入の保険から支払しが行われ,医師の診療報酬に対しても政府が一定程度規制するようになっている。
      • スウェーデンは国民保険制度を最初に導入した国であり,さらに医療は公立病院の医師によって行われている。
    • 「医療の社会化」の程度はスウェーデンが最も高く,フランスがこれに続き,スイスでは低い。
  • なぜこのような違いが生じたのか。
  • イマグートは,他の歴史的制度論者や国家論者と同様に,社会中心主義的説明ではこのような差異は説明できないことをまず明らかにする。医師は,他の専門家がそうであるのと同様に、国家介入を嫌い,自らの技量と判断で診療行為を行いたいと考えるものである。医師の政治的な影響力が小さい国ほど,医療の社会化が進みやすいという仮説を立てることができる。もしこの仮説が正しければ,医師の政治的影響力はスイスでは最も大きく,スウェーデンでは最も小さいはずである。
    イマグートはいくつかの指標を用して,医師の政治的影響力の大きさを測定する。たとえば,医師の数はスウェーデンにおして最も厳しく上限が定められており,人口10万人当たりの医師の数は3国の中で最も少なく,最も有利な立場にある。医師の組織化の程度で見ると,スウェーデンの医師はスイスと同程度に高く(90%以上)。フランス(約60%)よりもけるかに高い。しかも、スウェーデンではスイスと同様に単一の組合に組織化されているが,フランスでは競合する組合に分かれている。このように見ると,スウェーデンの医師の政治的影響力が3国の中で一番低いとはいえそうにない。したがって,医師の政治的影響力では政策の違いは説明できない。
  • そこでイマグートが用いたのが,「拒否点」という概念。執政部がある法案を提出した場合,その法案はいくつかの障害を乗り越えてはじめて成立し,実行に移される。
  • もし,議会に執政部の法案を拒否する権限がなければ,執政部は議会のことを考えずに行動できる。しかし,議会の承認が必要であれば,議会は執政部の行動にストップをかける「拒否点」になりうる。ある案件が議会の承認を必要とするかどうかは,憲法によって定められる。次に,執政部が議会多数派に支持されていれば,執敏部の提案が議会で拒否される可能性は低いが,そうでなければ拒否される可能性は高く,議会は「拒否点」になりうる。政党の議席配分は選挙制度によってかなりの程度左右される。最後に,議会の決定が国民投票によって覆される可能性が高ければ,有権者は「拒否点」となる。これもまた憲法によって定められる。執政部の掲げる政策が実現されるか否かは,こうして政治過程に埋め込まれた「拒否点」によって左右されるのであり,「拒否点」がどこに埋め込まれるかは憲法や法律によって定められる。




  • 新しい政策や政策変更を拒むのは、従来既得権益をもつ利益集団であると考えられたが、制度論では政治制度の中にそれら集団の影響力行使を可能にする機会構造が存在することに着目し、それらを拒否点と呼ぶ。
    特定政策分野に既得権益をもつ社会集団が組織化されたとして、その政策的影響力は、どれだけ政策変化を阻む拒否点が存在するかによって左右される。





2007-03-10 (土) 21:38:35 (4214d)