権威主義体制

「権威主義体制」についてのメモ。権威主義体制とは…
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権威主義体制 †

  • 全体主義と民主主義の中間に位置する政治体制。
  • 政党や団体の活動が強く制限を受けながらも一定程度容認されており、体系だったイデオロギーによる教化もなく、強い政治的動員によるよりも民衆の無関心に依存するような体制。
  • スペインのフランコ体制や戦間期及び戦後の東欧の体制、戦後の発展途上諸国に広範に見られる軍事的な強権体制がそれに当たる。1980年代においてそうした体制からの民主主義体制への移行が注目された。

リンスの権威主義体制論 †

  • 比較政治学の領域では、スペイン生まれの政治学者J・J・リンスの権威主義体制論が注目された。
  • ここでいう「権威主義」とは、政治意識・政治心理の領域で使われる権威主義(権威主義的パーソナリティ)とは別に、政治体制についての概念。
  • 「権威主義体制」とは、政治体制の類型として、全体主義体制ではないものの、かといって民主主義体制と呼ぶのは躊躇されるような中間的な体制を、どう扱っていくかという関心から生まれた。
  • 現実には、そのような白黒のはっきりしない体制、グレー・ゾーンに位置する国のほうが多いのであり、スペインの政治学者リンスは、この第三のカテゴリーを「権威主義体制」(authoritarian regime)と呼んだ。
  • リンスは、フランコ時代のスペインの分析を通じて、権威主義体制の概念を引き出した。しかし、その概念があてはまるとされる政治体制は、ラテン・アメリカ、アジア、アフリカなど第三世界の国々に多くみられる。また、軍部の独裁体制から、民政に移管する際にも、このような権威主義体制がよく見られる。

全体主義体制と権威主義体制の違い †

  1. 指導者
    • スターリンヒトラーは、カリスマ的指導者としての色彩が濃く、無制限に近い支配を行うが、
    • フランコなど権威主義体制の指導者は、カリスマ性が薄く、伝統を重視し、それに依拠したスタイルの支配を行う。形式的には確かに、強い権限を有しているが、実際は予測可能な範囲内で支配する。
  2. 政治構造
    • 民主主義体制では政党や利益集団の自由な活動を認めるなど、広範な多元性が存在するが、全体主義体制では、ナチスの「強制的同質化」のように、多元性を抑圧し、強引に一元化するのが特徴である。
    • これに対して権威主義体制の場合、教会、経営者・労働者組織など限定的ながら多元的状態が存在し、自由な競争的複数政党制は認められないものの、準反対派と呼びうる勢力も許容されることがある。職能代表制で限定的に社会集団の利害調整を図る場合や、議会が容認される場合もある。
  3. 動員の形態
    • 全体主義では、様々な手段によって私的領域にまで立ち入った宣伝・組織化が行われ、集会や示威運動(デモ)が盛んに行われ、それに協力しないことは体制批判と見なされる。このようなダイナミックな支配が全体主義の特徴だが、
    • 権威主義体制は、ずっと静態的で、一般国民は政治的無関心になっていることが多く、公然たる体制批判さえしなければ、それで許される傾向がある。無関心デノミー)を放置し、それを体制の安定に利用する傾向が見られることもある。
  4. イデオロギー
    • 全体主義では強力なイデオロギーによって自己武装がなされるが、
    • 権威主義体制では、そのような体系的なイデオロギーを欠き、それに準ずる教義が主張されることがあっても、それが前面に出され、徹底されることは少ない。単一の体制政党が掲げるイデオロギーも、諸勢力の融和のため、妥協的で曖昧なことが多く、全体主義の一党支配とは大きく異なる。

権威主義体制とは… †

  • 上記の特徴をまとめ、リンスは次のような定義を下す。
  • 権威主義体制とは、
  1. 限定された多元主義の要素を持ち、
  2. 精緻で体系的なイデオロギーを欠き、
  3. 高度の動員体制がなく、
  4. 指導者は形式的には無制限な権限を有するが、実際には完全に予測可能な範囲の内で権力を行使するような政治体制である。





2007-03-10 (土) 21:39:24 (3851d)