権力分立制
権力分立(separation of powers)の原理は、近代国家における政治機構の基本原理。権力分立とは、政府の権力を複数の機関に分散させて、それぞれに抑制と均衡(check and balance)を保たせ、権力がある特定の人間や機関に集中することを阻止し、権力の濫用を防止しようとする考え方。
一般には、立法権、行政権、司法権に分けられるから、三権分立といわれる。
権力分立の観念は、ロックによって先駆的に提唱された。彼は立法権と行政権の二権の分立を唱え、立法権の優位を主張した。
これを発展させて、三権分立論を唱えたのはC・モンテスキューで
ある。彼は『法の精神』の中で、国家権力を事実上、立法権、行政権、司法権の三権に分けた。この三権を別個の機関に分離し、その機関が相互に抑制と均衡を保つことかできるならば、市民の権利と自由は保障されるというのである。
権力分立原理は、歴史的にみると、18世紀の絶対君主による専制的な国家権力の行使に対する挑戦として生まれた。
モンテスキューの権力分立原理は、アメリカ合衆国憲法、フランス人権宣言に採用され、西側の先進諸国はいずれも三権分立主義に基づいて政治機構を構成している。
東側諸国や多くの第三世界諸国では、この原理か採用されていなかった。旧ソ連・東欧諸国のように「ソヴィエト民主主義」を掲げてきた諸国では、「すべての権力をソヴィエトヘ」として、権力分立を否定し、民主的中央集権主義(民主集中制)をとっていた。どの国もが権力分立の原理を認めていたわけではない。
三権分立だが、現実の政治では、立法・司法・行政の三権は分かち難く絡み合っている。
むしろ、三権が各機関に単純に分割されてしまうと、一貫した政治の営みは事実上、不可能になるので、三権分立の原理に基づきながら、三権のうちのいずれか一権に調整機能が委ねられている。
そして法律論では、このような優越的機能を、立法部が握っている国家を立法国家、行政部が握っている国家を行政国家、司法部が握っている国家を司法国家という場合があるが、これは意思決定の実質とは別であり、一般には実質的優位性を基準に、近代の「立法国家」から現代の「行政国家」への変遷が指摘される。
三権分立は、政府の内部で権力を分散して権力の集中を阻もうとするものであるが、中央政府の統治の権限をできるだけ地方団体に委譲・分散し、中央政府と地方団体の間で権限を分散させて、権力の集中を阻もうとするのが、地方分権である。三権分立を「水平的権力分立」というのに対して、地方分権を「垂直的権力分立」ということがあるのは、ともに権力分立の狙いがあるため。
地方分権の典型的な形態は、連邦制。連邦制は、巨大な国家や、内部が地域的に、民族など分化が進んでいる国家で、各地域に特にかかわりのある問題について、大幅に自治権を認め、中央政府はそれに干渉しないというものである。
例えば、アメリカ合衆国、カナダ、ドイツ、スイスなどは、いずれも連邦制。