功利主義

「功利主義」の個人的な勉強メモ。
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utilitarianism 功利説

功利主義 †

  • 功利を第一とする考え方。
  • 幸福を人生や社会の最大目的とする倫理・政治学説。
  • 最大多数の最大幸福」を原理とする。英国のベンサムミルによって唱えられた。現代でも多くの支持者を持つ。

イギリス哲学の系譜に属する功利主義は,行為の善悪の基準を,理性や客観的な真理ではなく,経験的な快・不快におく。イギリスの産業革命期を代表する思想。当時のイギリスは,貴族などの特権階級と庶民との身分的差別が強固であり,「功利性の原理」の前での平等を訴えた点で画期的な思想だった。

ベンサム †

イギリス功利主義を確立したベンサムは,抽象的な思弁の世界に閉じこもるだけでなく,議会制度改革や民主主義的な政治改革を訴えた。

1)最大多数の最大幸福
政治的・倫理的な正義(善悪)の基準は,功利性(快楽・幸福に対する有用性)によって決定されるとしたベンサムは,社会における「最大多数の最大幸福」(功利性の原理)を実現することをめざした。

2)快楽計算
ベンサムは快楽を量的に表現し,計算することができるとし、その計算を快楽計算とよんだ。この快楽計算を通して,最大多数の最大幸福を決定することをめざした。ちなみにその計算の基準には,強度・永続性・確実性・遠近性・純粋性・範囲など。以上のような快楽の内容を量的に計算可能だとする功利主義の立場を量的功利主義という。

3)主著
『道徳および立法の諸原理序説』(1789年)
功利主義の確立

J・S・ミル †

ベンサムの打ち立てた功利主義を引き継ぐだけでなく,経済学をはじめとする社会科学全般に大きな業績を残した。

1)質的功利主義
ベンサムの量的功利主義や快楽計算を否定し,精神的快楽を重視する。ミルはこのような質的功利主義の立場を「満足した豚であるよりは,不満足な人間であるほうがよく,満足した愚かものであるよりは,不満足なソクラテスであるほうがよい」と表現。

2)主著

  • 『自由論』(1859年)
    • 精神的自由を重視する自由論
  • 『功利主義』(1863年)
    • 質的功利主義の展開

功利主義 †

  • ホッブズヒュームによって提出されていたり,常識の中にあったアイデアや考えを,18世紀末にベンサムが学問的に体系化した。19世紀になって、J.S.ミルやシジウィックによって理論的により精緻なものに仕上げられた。
  • その名の通り「功利性」を最も重視する倫理学の考え方であり,人間の根本的な行動原理を快楽と苦痛ととらえ,われわれがなにをなすべきかは快を求め苦を避けることによって決まると考える。ただし,功利主義は利己主義とは異なり,自分一人の幸福(快楽)だけではなくすべての存在の幸福を目指す。
  • この考えによれば,行為や制度の倫理的価値は,その動機ではなくそれらがもたらす結果によって決まり(帰結主義),道徳的行為の最終日的は「最大多数の最大幸福」であるといわれる。
  • ここでの最終目的は,あらゆる法律の目標でもあり社会制度の究極の基準でもある。
    • したがって,功利主義における倫理観は,神の意志や良心や本人だけが感じる快楽などを基準とする倫理観に対立している。この功利主義の最終日的を達成するためには,個人の利害と一般の利害というしばしば衝突する二つの利害を調停しなければならない。
  • ベンサムは,人間の快楽と苦痛は計算可能である(快楽計算)と考え,『道徳と立法の原理序説』(1789)において,功利主義的な考えを倫理学の基礎だけではなく,法律や政治改革の基礎にもすえた。
  • 多数者の利益のためには少数者の犠牲はやむをえず,どんな事柄でも少数者よりも多数者を優先すべきだと考え「最大多数の最大幸福」を社会全体の倫理的な最終日的にする。
  • このような考えによって功利主義は,選挙法や救貧法の改正といった19世紀イギリスの自由主義改革運動の大きな推進力となった。
  • しかし,どんな人間でも快楽を求め苦痛を避けるものだというのは事実をあまりにも単純化しているということ,もし快楽の追求が善ならば,すべての行為が正しいことになってしまうこと,自分の幸福(快楽)と他人の幸福(快楽)との衝突をどう処理するのかということ,さらに,数量化され計算可能だと考えられた快楽の計算の実例をペンサムが挙げていないことなど,ペンサムの功利主義には多くの欠点があった。
  • ペンサム以後の功利主義の代表的人物としては,イギリスの法学者J.オースティン(1790〜1859)やジェームズ・ミル(1773〜1836),J.S.ミル(1806〜1873)の親子などがいる。
  • オースティンはかれの『法理学の領域決定』(1932)の中で功利主義をもとに法実証主義を展開し,主権者命令説を説いた。
  • ジェームズ・ミルは,ペンサムが創刊した雑誌『ウェストミンスター評論』で功利主義の考えを展開し一般に広めていく。
  • その息子J.S.ミルはペンサム以後の功利主義の最も有力な思想家であり,彼は快楽の強さだけではなく,質の違いについても言及した。ペンサムはあらゆる快楽をおなじように計算することができると考えたのに対し,J.S.ミルは「満足した豚よりも満足しない人間であるほうがよい」といい,快楽の質の違いを強調する。
  • シジウィック(1838〜1900)は,快楽から道徳を導きだすことを否定し道徳の基礎を直覚におき,その考えを功利主義に結びつけた。
  • スペンサー(1820〜1903)は,ダーウィン(1809〜1882)によって提唱された進化論をあらゆる現象に適用し、功利主義と進化論の総合をめざした。
  • アメリカのジェームズ(1842〜1910)やデューイ(1859〜1952)も功利主義に影響をうけている。

功利主義の長所 †

  • 法の意味を説明できる。個人の利益追求は社会全体の利益としばしば矛盾する。自然にまかせておけば対立する利害の調和を人工的に作り出す点に、法の意味はある。たとえばそれ自体では個人の利益となる窃盗も、法があるために刑罰を招き、したがって魅力のないものとなる。こうして窃盗は抑止される。

功利主義の問題点 †

  1. 一部の者を不幸にすることが社会全体の利益のために正当化される危険性がある。
  2. 「最大多数の最大幸福」は、多くの幸福を生み出すべしという原理と、広くそれを分配するという原理の二原理からなり、両者は時として矛盾する。
  • たとえば研究費を配分するとき、100の大学に公平に少しずつ分配するより、少数の大学に多くを割り当てた方が成果は大きく、全体の幸福も増加する。





2007-03-10 (土) 21:40:08 (2819d)