経済の国際化は歴史的に循環的なものであり,可逆的であるが,グローバル化は全く新しい不可逆的な現象であり,国民国家の自律性を損なう。
ハースト&トンプソンは,
などを指摘し,今日起こっている現象がなお国際化のレベルにとどまっていると主張する。つまり,戦前の国際化と今日の「グローバル化」との間に質的な差異はないという。
ハースト&トンプソンのねらいは,歴史上いまだかつて存在したことのない妖怪のような資本が世界市場を席巻し,その前で国家は全く無力であるかのように唱えるグローバル化論を批判して,グローバル化を歴史的文脈の中でとらえ返すこと,そして国家および国際機関による資本移動の統制管理の可能性および必要性を説くことにあった。
とはいえ、今日の現象を、国際化と呼ぼうとグローバル化と呼ぼうとも、19世紀的な自由主義段階と同一視することはできない。金融市場・情報技術の発展によって、かつては考えられなかったような大量の資本が短期間に移動することが可能になった。かつての資本移動が国外直接投資や長期安定的なポートフォリオ投資に限定されていたのに対して、1980年代以降の金融市場の発展は短期的投資に負うことも大きく、それはグローバルな通貨危機をもたらした。