最適通貨圏の理論

「最適通貨圏の理論」についてのメモ。最適通貨圏の理論とは…
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通貨統合

最適通貨圏の理論 †

  • いくつかの国の間で、単一の共通通貨に通貨統合することが適している地域的範囲を「最適通貨圏」と呼ぶ。
  • 最適通貨圏を決定する考え方の基本には、共通通貨圏においては、各国間の経済的格差を為替相場の変動によって調整することができず、他の手段によって調整しなければならない。こうした他の手段を持った地域であるかどうかが、最適通貨圏の要件となる。

最適通貨圏の条件 †

  • 共通通貨圏内における国と国との間で共通のショックが発生し、各国経済が同じように反応するかぎりにおいて、そもそも国と国との間で経済的格差が生じないため調整の必要はない。したがって、非対称的なショックが発生しないことが第一の最適通貨圏の決定要因となる。
  • しかし、共通通貨圏内における他の国には発生しないが、ある特定の国にのみ発生するという、非対称的なショックが発生した場合、共通通貨圏内においては為替相場以外の手段によって各国間の経済的格差を取り除く必要がある。このような調整が為替相場以外の他の手段によって可能であることが最適通貨圏の基準となる。
  • その手段の一つは、マッキノンによって主張された貿易面における経済の開放度。もう一つの手段は、マンデルによって主張された労働の移動性という要因。
  • 経済の開放度
    • たとえば、共通通貨圏内において、ある国で生産されている財から別の国で生産されている財へ需要が移るという非対称的な需要ショックが発生したとする。
      • もし価格が伸縮的であるならば、需要が増加した国ではその財の価格が上昇し、需要が減少した国ではその財の価格が低下することによって調整がなされる。しかし、もし価格が硬直的であるならば価格による調整が行われず、需要が増加した国では増産するために労働者の雇用が増加し、需要が減少した国では減産するために労働者の雇用が減少することによって調整される。
    • 貿易面において経済が開放されると、非対称的な需要ショックによってある国で総需要が増加し、他の国で総需要が減少したとしても、各国が財を輸出したり輸入することによって、その非対称的な需要ショックを吸収可能。しかし、もし経済が貿易面において開放されておらず、GDPに占める非貿易財の比率が高ければ、需要ショックの吸収を外国に求めることはできない。
  • 労働の移動性
    • 貿易面において経済が開放されると、共通通貨圏においても非対杵的な需要ショックを吸収することができるが、もしある国で生産性が上昇する一方、他の国で生産性が低下するという非対称的な供給ショックが発生するならば、貿易面において経済が開放されていることでは、その非対称的な供給ショックを吸収できない。
    • 生産性が相対的に低下した国では、価格が相対的に上昇する一方、労働の雇用量が減少する。労働の雇用量の滅少を抑えるためにその国の生産物を外国に輸出しようにも、価格が相対的に上昇しているため、輸出は困難な状態となる。
    • したがって、非対称的な供給ショックが発生して、ある国で労働の雇用量が減少する一方、他の国で労働の雇用量が増加する場合には、生産性が低下した国から生産性が上昇した国へ労働者自身が移動する必要がある。こうして労働者が自由に国際的に移動することによって、非対称的な供給ショックによって生じる各国における雇用の不均衡を円滑に調整することができる。
  • このように、労働の移動性や貿易面における経済の開放度が低い状況で、しかも非対称的な供給ショックや需要ショックが発生した場合には、ある国では不況が発生し、他の国では好況となる。
  • ただし、この国際的な経済状況の相違に対して、好況の国から税金を徴収して、不況の国に補助金として支払うという財政移転が可能であれば、たとえこれらの非対称的ショックが発生したとしても各国経済問の調整は可能となる。
  • したがって、国際的な財政移転が可能な地域でも、最適通貨圏を形成することができうる。ただし、国際的な財政移転を可能にするためには、各国政府が財政主権を放棄して、共通通貨圏における総合的な財政政策をとることが必要となる。

参考文献 †

  • 小川英治『国際金融入門』(日経文庫)p158〜
    • なぜ、国と国の間でお金(資本)が移動するのか?国際金融を理解する上での基本から的確に説明。為替相場、国際通貨システムなどの背景にある考え方をていねいに解説。通貨統合のメリットや通貨危機発生のメカニズムなど最新のトピックも網羅。国際金融システムの安定にはどのような発想が必要かが理解できる。





2010-06-28 (月) 10:07:33 (2558d)