nationalism over resources
- 資源保有国の自国資源に対する主権回復のイデオロギーないしは運動のこと。天然資源はそれを産出する国のものであるという認識に基づいた一連の主張,行動。
- 具体的にはOPECに見られるような価格引上げ,採掘規制,外国企業の国有化といった天然資源の完全恒久主権確立への動き,さらには1次産品カルテルを軸とした新国際秩序の要求といった動きであった。
- こうした思想を背景とする資源ナショナリズムは,1973年10月の石油輸出国機構 OPEC による石油戦略を契機に特に発展途上国において世界的に高揚したが,その萌芽はすでに52年の第7回国連総会に見出される(「天然の富と資源を自由に開発する権利」を決議として採択)。
- その後「天然資源に対する恒久主権」に関する9ヵ国専門委員会の設置(第13回国連総会)を経て,62,65年の国連総会では「天然資源に対する恒久主権」が議題として提出され,採択された。特に65年の決議では発展途上国側の主張が前面に押出され,そこでは天然資源の有限性が指摘されるとともにその開発を独占してきた多国籍企業の活動に対する規制と自力による開発,利用の権利が強調されている。発展途上国はその後も国連貿易開発会議,国連工業開発機関および国連資源特別総会などの国際的な会議の場で,先進工業国に対し自国資源に関する主権回復を強く主張している。
- こうした1970年代における資源ナショナリズム高揚の背景には,
- 60年代の先進国援助による経済開発が実質的効果をあげられず南北格差はむしろ拡大し,発展途上国は農業問題,債務累積問題など多くの困難をかかえていること,
- 発展途上国が保有する資源の開発,生産,流通の全分野を少数の巨大外資系多国籍企業が支配しており,その保有する資源をみずからのイニシアチブで経済開発に活用できず,資源の現地加工度も低かったこと,
- 資源の価格および輸出が不安定であったため,資源保有国がみずからの開発資金や輸入代金に充用する輸出所得も少く不安定であったことなどがある。(→新国際経済秩序樹立に関する宣言)