民約論/契約説/国家契約説
- 社会・国家は、自由で平等な諸個人の契約によって政治社会が成立したとする政治学説。
- 17〜18世紀のイギリス・フランスで、ホッブズ・ロック・ルソーらによって主張された。
- 契約という概念は中世ヨーロッパですでに存在していたが,中世においてはレーンと呼ばれる期限付きで授与される財貨を意味し,封建領主からその臣下に勤務と誠実を果たすという契約によって与えられていた。これが当時の社会秩序を形成していた。
- この観念が政治的共同体である国家の建設に理論的に適用された。2つの種類が存在した…
- 「本来自由で独立した人民が将来彼らを支配するであろう者と取り交わす」という統治契約
- 「社会的に独立した存在の人間の結合,あるいは社会の統一を行うために結ぶ」という
社会契約
- 統治契約は宗数的な契約とつながりをもっていたが,自然法思想の発展により社会契約論が発展していった。
思想家 | 著作 | 自然状態 | 理想的な政体 |
ホッブズ | 「リヴァイアサン」 | 万人の万人に対する闘争 | 絶対君主制 |
ロック | 「市民政府ニ論」 | 自由・平等で一応平和な状態 | 人民が立法権を中心とした政府に信託する体制,抵抗権も承認 |
ルソー | 「社会契約論」 | 自由で平等で平和な理想的状態 | 人民の主権により,主体の意志である一般意志に従う(直接民主政) |
- 参照:ホッブズ
- 「リバイアサン」(1651年)において、次のような主張をした。
- 人間が自然権として生き長らえる権利、「自己保存の権利」をもっているとする。しかし、国家や社会が形成される以前の状態(自然状態)は、人と人が厳しい生存競争をする戦争状態とされる。
- この「万人の万人に対する闘争」状態のままでは自己保存の権利は保障されない。ゆえに平和な市民社会を築くべく、社会契約を結んで、国家や社会を形成すると考えた。そのためには、契約を遵守すべく主権者を選び、その人に絶対的な服従を誓う。
- ホッブズは君主のような強力な主権者が必要と考えていたという点で、王権神授説に近いようだが、その理由付けは明確に違っている。
- つまり、君主が支配するのが正しいとするにせよ、それは被支配者の権利を守るために必要であるとされているからである。
- 参照:ロック
- 近代の立憲主義につなげた。『市民統治論』(1690年,市民政府論・統治(二)論)の中で、自然権の理念をさらに具体化し、すべての個人は生命・健康・自由・財産の権利をあたえられているとした。これらを「所有」の権利と呼び、それらが侵害されないように、人々は相互に社会契約を結び、国家をつくるとしている。
- ロックはホッブズと異なり、自然権は「委譲」できないものとしている。契約によって人々は固有の権利を守るために権限を政府に「信託」しているにすぎないわけだから、この目的に反する場合、「抵抗の権利」を行使することが可能である(抵抗権)。
- 自然権を守るために、権力の専制化を防止しなければならないと考えて、三権分立で有名なモンテスキューに先駆けて権力分立の必要性を説いた。
- 参照:ルソー
- 用語も論点も独特で、ホッブズやロックとそのまま比較できないが、著書の『社会契約論』(1762年)で次のような主張をした。
- 主権の担い手は主体的個々人の集合体である「人民」である(人民主権)。
- その主権は不可分・不可譲なので、政府に「委譲」できない。
- 主権は代表することはできないので、代議政治は否定され、直接民主制を強調。
- その内容が明確ではないものの、きわめてラディカルな人民主権論となっている。
2010-04-23 (金) 06:36:32 (4016d)