多元主義

「多元主義」についてのメモ。多元主義とは…
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多元主義 †

  • 政策形成の過程が少数の個人、団体によって決定されるというエリート主義に対して、個人、団体が自由に参加し、多様な影響力を行使しうる状態にあることを強調する考え。

多元主義は,政治社会は多種多様な利益団体から構成されており,公共政策はそれらの団体の間での対立,競争,そして調整の中から生まれると考える。
公共政策は一握りのエリートたちによって決められているとするエリート主義との対抗の中から生まれ,発展させられたきたものである。代表的な論者はダール。

多元的民主主義者は,個別的な利益の表出が自由に行われても,一定の条件が整っていれば自ずから公共の利益は実現される,と考える傾向にある。それぞれが自己主張しても,結果としてはそこに一定の均衡が成り立ち,その状態は大方の人にとってベストではないにしても,「満足できる」ものになっていると考える(この状況を多元主義的均衡と呼ぶ)。

一定の条件というのは,以下のようなものである。

  1. 団体間のチェック・アンド・バランスが働いている場合
    • ガルブレイスのいう「対抗権力」(countervailing power)の概念が有名。企業が独占的な市場支配力を持つようになると,それに対抗するものとして大企業の労働組合が登場するというように,一つの団体の力が高まると,それに対抗する団体が組織され相互に抑制しあうようになる。
  2. 重複メンバーシップが見られる場合
    • 仮に大部分の個人が一つの団体にのみ加入していれば,それぞれの個人にとってその団体がすべてになる。その人には,その団体に託した利益を実現することしか目に入らなくなる。そうなると,団体の個別的利益の追求活動もまた,むき出しのものになるだろうし,団体の間で妥協することも難しくなるだろう。しかし,もし個人が複数の団体に加入しておれば,仮にそれら団体の利益が衝突していなくても,世の中にはさまざまな利益があることを知ることができると同時に,「あちらを立てればこちら立たず」(トレードオフ)を実感することができる。このような状態を,個人が複数の団体から影響されるという意味で「交差圧力」を受けるという。このようにメンバーシップが重複しており,個々人が交差圧力を受けていれば,団体の要求は穏健なものになり,結果として得られる均衡状態は大勢の人間にとって満足できるものになる。
  3. 潜在的利益集団の存在
    • 共通の利益が当事者たちに明確に認識されていない場合がある。しかし,ある利益団体による圧力活動があまりに露骨になれば,それがきっかけになって潜在的利益集団も,共通の利益のあることを明確に意識するようになり,それを基礎に「対抗権力」を組織するようになるかもしれない。たとえば,酒販の免許制度があまりに厳格になり,ごく限られたところでしか酒が買えないようになれば,これを不満に思う愛飲家たちは団体を組織して,免許制度の規制緩和を求めて政府に圧力をかけるかもしれない。実際に「対抗権力」が組織されなくても,その可能性があるということが,既存の団体の要求を穏健なものにする効果があるのである。
       要するに,利益団体が自由に柔軟に組織されれば,特定の団体が横暴にふるまうことはなくなり,多元主義的均衡が得られると考えるのである。

多元主義の問題点・多元主義への批判 †

  • 多元主義への批判
    • そもそも個人はそれほど多くの団体に加入していないのではないか?
  • 集合行為問題に注目して,「対抗権力」の組織化には多大なコストがかかるために容易にはできないという批判。
  • 利益団体の影響力は均等ではなく,強い団体もあれば弱い団体もあるので,「均衡」は強い団体に有利に形成された偏った均衡にすぎない,という批判もある(デュアリズム)。
  • 最近では,偏りのない均衡が達成されているとしても,まさにそれが問題であるという指摘もなされる。ありとあらゆる利益団体が一定の影響力をもち,目的をある程度実現しているので,現状を少しでも変えようとするといずれかの団体の利益を傷つけてしまう可能性がある。そうした団体は激しく抵抗するから,時代遅れになった公共政策の見直しもできなくなっている。多元主義的均衡は多元主義的停滞におちいる。





2010-07-23 (金) 17:36:57 (2700d)