通貨統合

「通貨統合」についてのメモ。通貨統合とは…
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通貨統合 †

多国間の間で、各国の通貨を統合し、共通通貨を導入し利用すること。

通貨統合のメリット †

  • 複数の通貨が単一の共通通貨に統一されることによって、通貨交換に関わる取引費用が削減される。
    • 複数の通貨が利用されていれば、経済取引が行われる際に外国為替取引を伴う。複数の通貨を交換するという取引費用が発生する。一方、単一の共通通貨のみが利用されている場合には、その地域内における国際的な経済取引はその共通通貨で決済されるので、外国為替取引は伴わない。
    • 貨幣の機能の内、交換手段の機能および価値尺度としての機能については、利用される通貨の種類が少なければ少ないほど、それらの機能は高まる。交換手段の機能についていえば、ある一つの通貨をより多くの経済主体が利用すればするほど、その便益が高まる(ネットワークの外部性)。価値尺度としての機能についても、複数の価値尺度が存在する状況よりも単一の価値尺度のみで価値が表示されている状況の方が効率性が高まる。
  • 単一の共通通貨に統一されることによって為替相場が存在しなくなり、為替相場の変化に関する不確実性、外国為替リスクが除去される。
    • 固定為替相場制度を採用することによって、外国為替リスクを軽減することはできるが、必ずしもその外国為替リスクを完全に除去することができない。たとえ通貨当局が固定為審相場制度を採用していたとしても、民間経済主体がその固定為替相場制度に対して十分に信認を置いていなければ、民間経済主体は、将来において平価切り下げや固定為替相場制度の放棄を予想する。このような状況では、将来における平価切り下げが予想されるため、その平価切り下げの予想率やリスクプレミアムだけ内外金利差が発生することになる(ペソ問題
    • 一方、通貨同盟においては、単一の共通通貨が導入されることによって恒久的に為替相場が一対一に固定されるため、固定為替相場制度とは異なり、為替相場制度に対する信認が不十分となる状況は存在しない。つまり、為替相場制度の変更の可能性に起因するものを含めたすべての外国為替リスクが完全に除去される。「ペソ問題」で現れるような内外金利差も消滅することから、通貨同盟に加盟する以前には自国通貨が相対的に弱かった国では、予想通貨調整率やリスクプレミアムが消滅するその大きさだけ国内金利が低下する。

通貨統合のデメリット †

  • 各国の中央銀行が通貨同盟の統一的な中央銀行に統合されるため、各国の通貨主権を放棄せざるをえない。
    • 通貨主権が放棄されることによって、各国の金融政策の独立性が放棄されることになる。通貨同盟の統一的な中央銀行が各国経済にとって最適な金融政策を運営するかぎりにおいては問題は生じない。
    • しかし、各国の通貨当局が金融政策の運営において異なる目標を持っている場合、あるいは、たとえ同じ金融政策の目標を持っていたとしても、各国で発生した異なるショックに異なる政策対応を迫られた場合、通貨同盟の統一的な中央銀行がすべての通貨同盟国にとって最適な金融政策を運営することは不可能となる。
    • 中央銀行の機能の一つである「最後の貸し手」機能についても、各国中央銀行が必要と判断する状況と、通貨同盟の統一的な中央銀行が必要と判断する状況が一致するかどうかは保証はない。とりわけ、通貨同盟の統一的な中央銀行がインフレーションを嫌う政策スタンスをとっている場合には、最後の貸し手に対して慎重な態度をとる可能性がある。
  • 通貨主権の放棄に伴って、各国の通貨当局が通貨発行利益を放乗せざるをえない。
    • 通貨発行利益は、政府の財政収入源の一つであることから、通貨発行利益の放棄は一つの財政収入源の放棄につながる。一方、通貨同盟の統一的な中央銀行は、各国中央銀行に代わって通貨発行利益を獲得できることから、統一的な中央銀行が獲得した通貨発行利益を、通貨同盟の加盟国にどのように配分するかという問題が生ずる。
    • もし通貨当局とともに財政当局も同じ地域で統合されているならば、統一的な通貨当局が通貨発行利益をその統一的な財政当局に移転して、地域間の財政移転に利用すればよいが、そうでない場合に通貨発行利益の配分に関わる問題が現れる。一方で、この通貨発行利益配分問題は、通貨同盟に加盟している国々の国際協調によって解決しうる問題でもある。
  • 通貨統合によって、域内の通貨は恒久的に一対一に固定されるため、通貨が統合されていない状況では可能であった、為替相場の調整による各国経済間の不均衡の調整が不可能となる。(最適通貨圏を満たさない状況の場合)
    • 各国の生産構造や消費構造に変化が生じたために貿易構造に変化が生じたとする。たとえば、ある国の消費者が国産車から外車志向に消費の嗜好を変えたら、これによって外車の輸入が増加するために、貿易構造が変わるとともに、国産車と外車の相対価格も変化する。このようにして、国内財と外国財の相対価格(P/SP’)である交易条件が変化する。
    • こうして交易条件が変化した場合に、この交易条件の変化に対して為替相場(S)による調整が不可能ならば、両国の物価水準(PとP’)の調整によって対応せざるをえない。すなわち、一方の国でインフレーション、もう一方の国でデフレーションが発生する。とりわけ、経済に対してデフレ的な圧力を受ける国では、GDPの縮小に直面する。また、もし労働者が国際的に移動することを嫌い、しかも、賃金の低下に抵抗するならば、その国では失業が増加する。

参考文献 †

  • 小川英治『国際金融入門』(日経文庫)p153〜
    • なぜ、国と国の間でお金(資本)が移動するのか?国際金融を理解する上での基本から的確に説明。為替相場、国際通貨システムなどの背景にある考え方をていねいに解説。通貨統合のメリットや通貨危機発生のメカニズムなど最新のトピックも網羅。国際金融システムの安定にはどのような発想が必要かが理解できる。

関連 †






2007-03-10 (土) 21:45:56 (3819d)