一般的に有権者の投票行動は次の三つの要因によって決定されるという…
- 支持政党に基づく投票
- 3つの要因のうち,投票行動に最も影響するのは政党支持。有権者の多くは各自の政党支持に従った投票行動をとっている。しかし,脱政党化の進行と無党派層の増大のために,政党支持が必ずしも支配的な要因ではなくなってきた。
- 争点評価に基づく投票
- 選挙時点において社会が直面している主要な政治的問題のこと。政党や候補者はそれらの政治的問題について,その解決策を政策または公約として提示し,有権者の支持を最大化しようと努力する。もしも有権者が十分に「合理的」であれば,争点を個々に詳細に吟味し,それらに対する自らの意見と政党や候補者の立場を比較検討した上で,支持または不支持という結論を出すことになろう。
- 関連:業績投票
- すべての争点が選挙結果に強い影響を及ぼすわけではない。バトラーーとストークスは,争点が選挙結果に重要な影響をおよぼすための以下の3つの条件を提示した。
- ある争点について,多くの有権者が関心をもっていること
- 争点に対する有権者の意見の分布が一方に偏っていること
- その争点に対する政党の立場が明快であること
- 候補者評価に基づく投票
- 候補者の資質とは,ポストにふさわしい,人格,能力,指導力などの総合的評価である。候補者評価の重要性は,政党組織の弱体化とマスメディアの発達によって,最近その重要性が高まっている。
従来の投票行動の特徴…
- 中選挙区制の下では、選挙運動は個人中心で、有権者も自分の組織や地域の利益をどれだけ実現してくれるかを基準に候補者を判断することが多く、国政選挙でも政策があまり重視されなかった。
- 地縁、血縁を中心とするパーソナル・ネットワークが重要。その結果、農村部のほうが都市部よりも投票率が高くなっている。投票率は政治的関心の高さを示すというより、投票義務感や地域社会の人的ネット・ワークの強さを示すことになっている。
- 地方レベルの選挙のはうが一般に投票率が高い。これは身近で生活に関係あるものを重視するという考えと対応している。国政選挙では、衆議院選挙のはうが投票率が高くなっている。
- 国政選挙では、「人物重視」よりも「政党重視」の傾向が強くなった。
- 次第に、イメージ選挙の色彩が濃くなってきており、特にテレビの影響が強くなる。
- 1960年頃から青年層の棄権が増加。大都市部で顕著、青年層は身近な地方レベル選挙でも多くが棄権。「政党支持なし」の、いわゆる「無党派層」の増加と関係していると思われる。
- 1960年代末から国政選挙でも、投票率で男女逆転が生じ、女性のはうが高い投票率を示すようになった。地方選挙では、以前からこの傾向が出ていたが、国政選挙でも同じ傾向となった。これは20歳〜50歳代の男性に多い転勤や長距離通勤の影響といわれる。また、地方選挙の投票率で男女差が開いているのは、女性が明確に、国政よりも地方政治により関心を示しているため。
学派 | アプローチ | 論点 |
コロンビア学派 | 社会学的要因 | マスメディアとオピニオンリーダーの社会的影響力。社会的属性(先有傾向)からの投票行動分析 |
ミシガン学派 | 社会心理学的要因 | 政党・争点・候補者が重要。(先有傾向としての)政党支持態度と投票行動との関連を軸とする多変量解析 |