二重構造

「二重構造」についてのメモ。二重構造とは…
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二重構造 †

  • 高度成長期に大企業を中心とした高生産性部門と中小企業の低生産部門が並存している構造をさす。日本経済の特徴とされた。
  • 近代的大企業と前近代的零細企業が並存し、両者の間に資本集約度・生産性・技術・賃金などに大きな格差がある。

一つの社会の中に,近代的要素と前近代的要素とが,それぞれ無視しえない比重をもって同時に存在している状態をいう。この概念を生み出す直接のきっかけとなった現象は,大企業と小企業との間に存在する労働生産性および賃金水準の著しい格差である。大企業は,先進工業国で開発された最新鋭の資本設備を導入し,高い労働生産性を実現する。これに対して小企業では,伝統的な生産方法が用いられ,労働能率はきわめて低い。この生産力の開差を反映して,大企業と小企業との間に大幅な賃金格差が形成される。
 もし労働市場が十分に競争的なら,労働者は賃金の低い企業から高い企業へ移動するので,企業間の賃金格差は,労働の質的差異に対応する部分を除いて,消滅してしまうはずである。しかし,大企業と小企業との間で労働市場は分断されており,自由な移動は行われえない。大企業は,新規学卒労働者を採用し,企業内訓練によって近代的設備の操作に習熟した熟練工を養成する。賃金は熟練度に見合って形成され(年功賃金),熟練養成に投じた訓練費用が全部回収されるまで,彼らは雇用されつづける(終身雇用制度)。そのため,大企業労働者の労働市場は閉鎖的とならざるをえない。かくして,大企業から小企業への下降移動は容易だが,逆方向の上向移動は一般に困難である。労働市場のこの階層性のために,賃金格差は長期的に持続しうるものと考えられた。
 近代的工業部門と半封建的零細耕作との対比,生産水準と生活水準との離反,あるいは伝統的文化と西洋文明との融合せざる共存,等の指摘の中に,二重構造の発想はすでに存在していたといってよい。しかし,二重階層的構造という用語をはじめて用い,人々の関心をこの方面に向けた最初の人は,有沢広巳であるといわれている。雑誌《世界》(1957年3月号)に掲載された論文の中で有沢は,神武以来の好況にもかかわらず,低賃金・低所得層がますます増えている事実を強調した。そのため,彼の議論全体には,二重構造の解消をきわめて困難とみる悲観的展望の色彩が濃厚である。だが,第2次大戦後の高度成長過程を通じて,規模間賃金格差が急速に縮小し,低所得者層が減少に向かったことは,今ではよく知られている事実である。なおその後,1957年の《経済白書》が二重構造を取り上げ,以降,この用語は急速に普及した。
 二重構造概念に対する批判として,〈傾斜構造〉を力説する立場がある。発展途上国によくみられるように,伝統的社会の中に超近代的大企業が孤立的に君臨する場合には,文字どおり経済の二重構造を語ることができる。しかし,日本について生産性や賃金を規模間で比較すると,大企業から小企業にかけて連続的な格差が観察でき,上に述べた発展途上国の事例とは明らかに異なる。確かに,日本の場合,事実の表現としては〈傾斜構造〉のほうがより正確である。だが,異質的要素の同時併存状態を鋭く特徴づけるものとして,二重構造はやはり魅力ある概念といってよいだろう。

新二重構造 †

  • 新二重構造とは、マクロ面では、企業リストラによるデフレ圧力と、財政金融政策による潜在的なインフレ圧力とのせめぎあいを示す。





2007-03-10 (土) 21:46:57 (4547d)