- 覇権の概念の現代的な含意の起源は、国家が支配階級の文化覇権の道具と化すことを指摘したグラムシの『獄中ノート』であり、この語彙は巨大権力の搾取的、抑圧的性質を暗示するニュアンスを含んでいる。
- 「覇権国」という場合には、軍事力、政治力、経済力、文化的影響力など総合国力において圧倒的に優越し、他国との力量の乖離を前提に国際社会に秩序=国際公共財(たとえば、自由貿易体制や国際金融の安定性)を供給する国家をイメージする。
- 第二次大戦後のパックス・アメリカーナ(Pax Americana)はその典型。19世紀のパックス・ブリタニカもその一種とする見方もある。
- 軍事力、経済的な要素としての経済力、社会的な要素としての文化的な影響力という3つの側面において他国を圧倒するようなパワーを持つことが条件となる。
- キンドルバーガー
- 国際金融(基軸通貨の供給、為替レートの管理)、貿易システムを管理する能力(具体的には、経済規模の大きさ、国内投資に対する貯蓄超過の存在、実物市場・資本市場の開放など)という経済的な要素を重視。
- R.ギルピン
- 軍事力(国際安全保障におけるリーダーシップ)という政治的な要素を重視。
- ジョセフ・ナイ
世界資本主義のサイクルと覇権国のサイクル †
段階 | 世界資本主義 | 覇権国 |
第一段階 | 世界経済の上昇期。各層で生産活動は拡大する。原材料に対する需要が大きいことから、「周辺」でより高い経済成長が達成される。 | 国力の強大化に成功した国が潜在的覇権国として登場する。 |
第二段階 | 世界経済が上昇期から下降期へ。「周辺」から経済は停滞し始め、「中心」でも失業率は高まり、富の分配をめぐる闘争が行われる。結果として「中心」では所得の再分配が行われ、次第に経済は回復していく。影響は「周辺」に伝わる。 | 世界経済における競争が展開され、勝利した国が新しい覇権国となる。 |
第三段階 | 世界経済再度の上昇期。交易条件は世界経済の「中心」にとって有利となり、「中心」の成長の方が「周辺」より高くなる。 | 新しい覇権国の下で再度の経済上昇期。覇権国の力がある限り、経済は上昇期にある。 |
第四段階 | 世界経済再度の下降期。「中心」で供給過剰の状態が起こることで他へ影響が及び、経済状態は下向きとなる。 | 覇権国の力が衰退し,世界経済もまた再度の下降期に入る。 |
覇権国の変遷 モデルスキーの長期サイクル論 †
世紀 | 覇権国 | 挑戦国 |
16世紀 | ポルトガル | スペイン |
17世紀 | オランダ | フランス |
18世紀 | イギリス | フランス |
19世紀 | イギリス | ドイツ |
20世紀 | アメリカ | ソ連 |
- ウォーラーステインは,16世紀はスペインが覇権国ととらえ,また、18世紀については覇権国が存在しなかったと考えている。
2008-07-18 (金) 09:49:28 (4161d)