Clash of Civilizations
西洋キリスト教文明と,イスラム文明や儒教文明などとの価値観の衝突のこと。欧米社会におけるイスラム脅威論の根拠ともなった。
〔アメリカの政治学者サミュエル・ハンチントン(Samuel P. Huntington)が 1993 年に発表した同名の論文から〕
冷戦が終わった現代世界において、文明と文明との衝突が対立の主要な軸であると述べる。 とくに文明と文明が接する断層線で紛争が起こると指摘。
米国ハーバード大学教授のサミュエル・ハンチントンが、雑誌「フォ
ーリン・アフェアーズ」(1993年)に書いた論文名に由来する、東西
冷戦構造崩壊後の新たな世界情勢についての言説。東西冷戦構造が崩
壊した後、湾岸戦争をきっかけとして、今後の紛争の火種はイデオロ
ギーではなく、文明同士の抗争であるという議論が起こってきたが、
ハンチントンの論文は、そうした議論を受け、それを「文明の衝突」
というキャッチ・コピーにして一種の流行を生み出した。文明間の抗
争といった場合、ここで主として論じられるのは西欧文明圏と非西欧
文明圏との抗争である。しかしその場合、鍵を握るのはむしろ、普遍
的な文明としての西欧文明の危機である。文明の衝突という激しい言
葉とは裏腹に、西欧文明への不安が語られ、それが非西欧文明との衝
突という言葉で説明されている。もちろん、国際政治の中でのこの言
説の意味は、西欧支配への危機、かつての黄禍思想の焼き直しでもあ
る。従って、文明の衝突は、帝国という言説に似ていなくもない。
▲知恵蔵2005[現代の思想]分野より