NHKと政治

「NHKと政治」についてのメモ。NHKと政治とは…
HOME > NHKと政治

NHKと政治 †

 政治家寄りどころか、一心同体ではないかという事件も発覚した。五年前、森喜朗首相(当時)の「神の国」発言をめぐり、その釈明会見の「指南書」が内閣記者会で見つかった。NHK側は否定しているが、NHK記者が書いたのではとうわさされた。

 前出のNHK記者はこうあきれる。「政治部の同僚が『われわれはある意味、議員や派閥と一緒になって権力闘争に参加している。そうでなければ政治部記者ではない』と話したのを聞いて、がく然とした」

 元NHK政治部記者で椙山女学園大学の川崎泰資教授(ジャーナリズム論)は「一部の政治部記者は、自民党の政治家と一心同体という姿勢をとっている」と全体ではないと指摘するが、その一部記者は「情報を得ながら報道せず、“身内”に成り下がっている。その方が、海老沢体制では組織内で出世できるからだ。そんな出世構造を変えない限り、ジャーナリストではない“記者”がはびこる」と構造的な問題を指摘する。

 元NHK番組審議員で夙川学院短期大学の河内厚郎教授は「NHKの政治記者を個々にみると、朝日新聞と似たリベラルな記者が多い。ところが、上部の政治判断で(組織が求める方向に)軌道修正される」と組織体質を問題視する。

 立教大学の服部孝章教授(メディア法)も「NHKは政治部閥が主導権を握っている。政治部と他部署間には大きな壁があり、人事交流もない。政治部OBの海老沢会長が仕切ることで、政治部が大きな力を持っている」と同意見だ。

 大手紙のベテラン政治部記者は「自民党一党支配の時代には、NHKの政治部記者は主要議員の言うことをいかに聞き、NHKの意向をいかに聞かせるか、という関係づくりにいそしんだ。いわば政治家のお守り役が大事な仕事という印象だった」とNHKを見る周りの認識は一致している。

 一心同体ぶりが度を過ぎると問題も起こる。先のNHK記者は「消費税が導入された直後の一九八九年参院選で、街頭インタビューしたら政府批判ばかりで、それ以降、選挙前の街頭インタビューは禁止された。ロッキード事件裁判で、田中角栄氏への一審判決が出た八三年には、この問題を追及していた三木武夫氏への取材も企画されたが、政治部側の意向で中止になったと聞いた」と明かす。

■多数政党に近いニュースばかり

 こういった姿勢は画面にも現れる。服部教授は「政治部のニュースは多数政党(自民党)に近い立場の内容ばかりだ。自民党政権を維持することで、NHK組織の安泰を図る意図が見える」と分析する。さらに今回の問題でも、「NHK番組では朝日新聞の主張を伝えず、NHKだけ見ていると、事件の全体像が見えない。報道姿勢が一般国民に向いていないからだ。公共放送を標ぼうする説得力がない」と分析する。

 NHKは日本放送協会番組基準で「政治上の諸問題は公正に取り扱う」と表明している。これも先のNHK記者は「与党など特定勢力を批判しない理由にすり替えている」と憤る。

 前出のベテラン政治部記者も「だから、自民党議員にとっても、NHKは自分たちのメディアだと受け止めているフシがある。一心同体の関係だから、番組への政治介入問題にしても、政治家は圧力をかけたとは思っていないはず」と説明する。

 政治家側にも問題はあるようだ。ある民主党議員は、「NHKに対しては、政治の側も甘いのが現状だ」と打ち明ける。

 「例えば、国会での国対委員長会談などではNHKが冒頭撮影に必ず入ってくれる。与野党問わず出席者の顔を一通り画面に映す。政治家にとっては、全国に流れるニュースに映ったことで格好の地元PRになる。NHKに映ってこそ政治家はなんぼだと、ある年代以上の議員は思っている」

 同議員によると、NHKによる政治家へのサービスはこれにとどまらない。NHKのど自慢を地元選挙区に誘致したり、支援者向けに各種の歌謡ショーの入場券を確保する場合も、「政治部記者に言えば、融通してもらえることが多い」。

 独自に情報を得ようと政治家に食い込む努力は、どのメディアでもしているだろう。人間関係から、知っても書けないこともある。その報道姿勢に疑問を持ったら新聞なら購読をやめられる。だが、NHKは「みなさまの受信料」で成り立っている。

 川崎教授は「今回、政治介入を受けて番組内容を変えたとしたら、『自民党からお金を出してもらいなさいよ』という声が高まるだろう。こんな報道姿勢が続くなら、受信料不払いはより拡大する」と批判する。

 放送評論家の志賀信夫氏はこう警鐘を鳴らす。

 「現状ではNHKは、自主規制した結果、政治ニュースで何を伝えるべきか、という主体性が生まれない。政府・与党との強い関係は、長い間の習慣で出来上がったものだから、トップが辞めてもすぐ変わるものではないだろう。だが、受信料は番組の対価として視聴者が払っていることを自覚することが大事だ。政治家の顔ではなく、視聴者に向き合うことからしか政治報道も変われない」

NHK特番問題:
「政治に弱い」NHKに視聴者の不信感
 NHKと朝日新聞社の対立は、現時点で判定を下すには材料不足だ。ただ、メディアと政治との関係についていえば、NHKは突出して政治との距離が近く、常に不透明さがつきまとってきたように思う。【岸井成格・特別編集委員】

 放送・通信の分野では今でも「田中支配」という言葉が生きている。田中角栄元首相が“ドン”として君臨し、特にNHKは、田中派−竹下派−小渕派−橋本派の系譜に連なる政治家たちの影響力が強かった。

 ロッキード事件で逮捕された田中元首相が釈放されて東京・目白台の自宅に帰った時のこと。郵政事務次官出身で元首相に近かった小野吉郎NHK会長が田中邸に駆けつけ、出迎えた。小野会長は世論や野党の批判を浴び、辞任した。

 中でもNHKの“守護神”とも呼ぶべき存在だったのが、茨城県選出で田中元首相に信頼された“郵政族”の実力者、橋本登美三郎・元自民党幹事長だ。今回のNHK批判の矢面に立つ海老沢勝二会長、ポスト海老沢をうかがう有力理事、そして先に番組制作費詐欺事件で摘発された元プロデューサーは、いずれも茨城県出身だ。

 これは偶然とは言い切れない。橋本元幹事長に連なる茨城人脈がNHKに増殖し、職員のモラルの低下を招いたという指摘が多い。このことは縁故採用、情実人事がまかり通る社内風土と無縁ではあり得ない。

 政治家の子弟や後援会関係者、郵政省(現総務省)や族議員らの推薦には「最大限の配慮」がなされてきたという。政治部出身者で固めた海老沢体制は、こうして築き上げられた相互依存の集大成といえる。そして「田中支配」の最終走者である旧橋本派の衰退と時を合わせ、一連の不祥事と疑惑が噴き出した。

 NHKの内部では、かつて、実力者の会長と労組(日放労)委員長(旧社会党衆院議員)との間で壮絶な権力闘争が展開された。与党だけでなく野党も巻き込む“暗闘”だった。実態が見えぬまま、表向きはともに私的スキャンダルで失脚したが、多くのナゾが残されている。

 当時、新聞協会の有力幹部がNHKの幹部に忠告した言葉が伝えられている。「どんな組織にも権力闘争や派閥争いはある。しかし、NHKのように、そこへ政治が介入したり、NHK側から政治権力を招き入れようとするのは異常だ。報道機関としてはあってはならないことであり、自殺行為だと知ってほしい」

 NHKにその自覚があるだろうか。朝日が今回指摘した問題の評価は即断できないが、「政治に弱い報道機関」という視聴者の不信をNHKは真剣に受け止めるべきだろう。「特殊法人であり、予算や事業計画が政府や国会の承認を必要とする弱い立場なので」という言い訳は通らない。

NHK特番問題:
政治との距離、NHKはどう保つ?
 旧日本軍の従軍慰安婦を扱ったNHKの特集番組をめぐり、政治家が介入した疑いを指摘した朝日新聞と、これを否定するNHKが互いに抗議、反論の応酬を繰り広げている。「政治家の圧力」による「番組内容の改変」はあったのか。朝日新聞の取材に問題はなかったのか。ジャーナリズムの根幹にもかかわる問題と、その背景を検証した。【NHK問題取材班】

 ◇予算編成期 批判派に事前説明

 特集番組が放送された01年1月30日の前、NHK幹部らは、安倍晋三自民党幹事長代理だけでなく、自民党の「日本の前途と歴史教育を考える議員の会」のメンバーにも番組内容を説明していた。同会会長の古屋圭司衆院議員は毎日新聞の取材に、議員会館の自室で放送前、NHK側から新年度予算の内容と一緒に番組についても説明を受けたことを明らかにした。

 議員の会は今月19日に出した見解で「NHKはそのころ、当会議員数人を含む自民党関係議員に予算を幅広く説明、番組についても『内部からも問題視する意見があり、いま修正している』といった説明があった」としている。NHKが当時、政治サイドの理解を得ることに躍起になっていた実態を浮き彫りにしている。

 同会は歴史教科書問題などに取り組む議員連盟で、この特集番組に批判的だった。安倍氏は元事務局長で現在は顧問。当時の会長は中川昭一経済産業相。メンバーは全体で約10人で、衛藤晟一、下村博文、平沢勝栄各衆院議員らも参加している。

 番組の編集・放送時期はNHKの予算編成、国会提出の時期と重なる。古屋氏によると、面会はNHK側が求めたもので、時間は15分程度。予算説明の後、NHK側が特集番組に言及し、「いろいろ話題になっているので、現在放送内容について検討している」との説明があった。古屋氏は「公正にやって下さい」とだけ述べたという。

 NHK側の面会の狙いが予算説明にあったのか、番組内容の説明にあったのか即断はしにくい。この時期、NHKが予算説明に各議員を回るのは「恒例行事」でもある。平沢氏は「NHKは予算のペーパーを配りにアポイントなしに回ってきた。放送前だ。たまたまいた私が『大変ですね』と声をかけたら、『ちゃんと公平な番組を作っていますから』と言っていた」とも述べている。

 NHKの宮下宣裕理事は19日の記者会見で「安倍さんと中川さんが『議員の会』の幹部をしており、この会で番組が話題になっているということをあらかじめ知っていたので説明した」と語った。議員の会幹部の一人は番組内容の事前説明について「普通はない。私のところに事前に来たのはあの特番だけだ。それほどあの番組が異常だったということだ」と言う。

 政治圧力・介入について、議員の会は「『変えろ』などと圧力をかけた事実はない」と否定している。






2007-03-10 (土) 21:29:29 (4660d)